製造現場にイノベーションを、アダプティブマシンを訴求するB&R:FAインタビュー(2/2 ページ)
産業用オートメーションを展開するB&Rでは、インダストリー4.0などモノづくり現場の新たな動きに合わせた提案を進めている。B&Rの日本法人設立は2014年となるが、グローバルでのモノづくりの変革を推進する同社の強みと日本法人としての取り組みについて、B&R(日本法人)代表取締役の小野雅史氏に話を聞いた。
リニア搬送システムを組み合わせたアダプティブマシン
MONOist リニア搬送システムはどういう提案を進めているのですか。
小野氏 制御技術を組み合わせたリニア搬送システムは国内メーカーがそれほど取り組んでいない領域だった。そこで、日本の製造現場に新たな価値を提案できると考えた。工場などの現場を見ていると、搬送領域を人手で行っていたり、自動化されていても固定化され過ぎていて、柔軟性がなかったりするなどの課題がある。搬送領域が柔軟な形で自動化できれば、生産性を高められる領域が数多く存在する。
特に日本の製造現場は多品種少量生産が主流となっており「多様性に対応しつつ自動化を行いたい」ニーズが強い。リニア搬送システムはリニアモーターと電気制御技術、それをコントロールするプログラムなどにより、高速、高精度で複雑な搬送が可能となる。プログラム次第では柔軟性と生産性を両立させることが可能だ。特に生産品種の切り替えが必要な業種では効果を発揮する。食品や飲料、メディカル製品などでは生産性が50%以上上がるケースなどもある。
こうしたリニア搬送システムを既存の製造設備と組み合わせることで、生産ライン全体を1つのシステムとして効率化することができる。B&Rではこのコンセプトを「アダプティブマシン」として訴えている。これは、リニア搬送システムとマシンビジョン、ロボット技術、デジタルツインなどを組み合わせて、受注状況に合わせた柔軟で迅速な段取り替えなどを実現し、マスカスタマイゼーションを可能にするというものである。こうした考えを示しながら提案を進めているところだ。
挑戦ができない日本の製造現場
MONOist 日本の製造現場や工場の状況についてどう見ていますか。
小野氏 B&Rでは全社的にもイノベーションの価値を訴え続けている。日本には多くのオートメーション関連企業が存在し、B&Rとしてはグローバルでの視点からの新たな技術やモノづくりの価値を示すことが特徴だと考えており、加えてそれが差別化にもつながると考えている。そういう意味で、日本であまり普及をしていない技術だが、将来的にグローバルで受け入れられる技術を紹介することを重視しているが、日本の製造現場の中では、新しい技術の採用にネガティブな反応を示すところも多い。日本のモノづくりや製造現場が優れている点はまだまだ多いが、海外の先進トレンドからすると旧態依然で身動きが取れなくなっているところも数多く見られる。今は技術そのものが大きく変化する時代である。失敗を恐れるのではなく新たな挑戦を積極的にするタイミングであり、新たな技術を積極的に検討すべきだと見ている。
MONOist 今後の目標について教えてください。
小野氏 リニア搬送システムについては提案が進んでいるので、次はビジョンシステムの導入を進めることを考えている。また、こうした技術の価値を体感できるエクスペリエンスセンターを国内にも設立する。
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