日本の交通の動向と新型コロナウイルスが及ぼした影響:交通政策白書2020を読み解く(前編)(6/6 ページ)
本稿では、交通政策白書2020の「要旨」を基に、第1部、第2部と順を追って内容を概観する。前編ではコロナウイルス感染症の影響も含めた、交通の動向について見ていきたい。
タクシー事業への影響
タクシー事業については、事業者264社に対して調査を実施。運送収入については、前年より50%以上減少する事業者は、3月までは1割程度だったが、緊急事態宣言の発出後は約6〜7割に急増した。また、輸送人員については、3月以降は、前年に比べて約6割減少した(図29)。
航空への影響
本邦航空運送事業者17社への調査結果によると、4月の輸送人員について国際線は97%減、国内線は86%減となった。便数については、当初計画比で、国際線は5月に95%減、国内線は5月に74%減の見込みだった。また、4月29日から5月6日のゴールデンウイークの前年比の予約状況について、4月28日時点で国内線は93%減、国際線は98%減だった(図30)。
内航・外航旅客船への影響
内航旅客船については、内航海運(旅客)事業者97社に対し、外航旅客船については、国内の定期航路事業者全4社および、クルーズ船事業者全3社に対して調査を実施。内航旅客船については、自粛の拡大していた3月から既に旅客船事業者の運送収入の減少傾向が強まっていたが、緊急事態宣言が発出された4月には、観光船(主に観光地に就航する船舶)の全事業者の運送収入が前年同月比で3割以下となった(図31)。
新型コロナウイルス感染症に関する今後の展開
交通白書2020では、いずれの事業も厳しい経営環境に置かれているとした上で、今後の喫緊の課題として、交通事業・サービスの維持・存続や交通事業従事者の雇用継続を挙げている。また今後、新型コロナウイルス感染症のまん延防止策を講じるに当たっては、より社会経済活動の維持との両立に配慮した取り組みに移行していくといい、「新しい生活様式」に対応した取り組みが必要になると述べている。
さらには、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機として、働き方の変化や自転車通勤の積極的な活用、ICTの活用、サプライチェーンの国内回帰や多元化など、社会のさまざまな面で変化が生じ、感染収束後においても進行・定着すると考えられることから、交通分野においてもこのような社会の変化に対応していく必要があるとしている。いずれにせよ、社会全体の動きに呼応できる臨機応変な対応が求められていると言えよう。
世界に先駆けて超高齢社会の足を支える
前出の図1で示したように、日本では近年高齢化が進んでおり、そのスピードは世界で最も早い。2025年には高齢化率が3割を超え、2050年には4割弱にまで達すると推計されている。また平均寿命も男女ともに過去最高を更新し続けており、世界でも最高水準となっている。こうした「人生100年時代」において、高齢者が充実した日常生活を送るためには外出は必須であり、交通が果たすべき役割は大きい。
後編では、日本における高齢者の生活と生きがいづくり、外出の実態について考察した上で、超高齢社会の「足」を支える施策の最新動向や先進的な取り組みを紹介する。
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