日本の交通の動向と新型コロナウイルスが及ぼした影響:交通政策白書2020を読み解く(前編)(5/6 ページ)
本稿では、交通政策白書2020の「要旨」を基に、第1部、第2部と順を追って内容を概観する。前編ではコロナウイルス感染症の影響も含めた、交通の動向について見ていきたい。
新型コロナウイルス感染症の影響
2019年12月下旬に中国湖北省武漢市で感染者が報告された新型コロナウイルス感染症は、2020年10月末時点で全世界の感染者が4400万人を超えるなど、世界中に広がりを見せている。いまだ感染収束への道筋が見えていない現状ではあるが、2020年4月時点での交通分野への影響を確認したい。
鉄道への影響
鉄道については、旅客運送を行う鉄軌道事業者176社(JR旅客会社6社、大手民鉄16社、公営11社、中小民鉄143社)に対して調査を実施。輸送人員について、JRは4月の実績で70〜90%の減少となっていた。中小民鉄については、輸送人員が50%以上減少と回答した事業者は3月までは一部のみだったが、4月は7割近くの事業者に拡大した。4月以降は、通学や観光客の割合が大きい一部の中小民鉄だけではなく、通勤利用者が多い大手民鉄、公営についても大きな影響が見られた(図26)。
乗合バス・貸し切りバスへの影響
乗合バス業界については、調査を実施した事業者52社のうち、緊急事態宣言の発出後、運送収入が前年より50%以上減少する事業者は約6割であり、輸送人員も全体で5割程度の減少だった(図27)。貸し切りバス業については、調査を実施した事業者79社のうち、運送収入が前年より70%以上減少する事業者は、2月は2%程度だったが、3月以降は約8割、緊急事態宣言の発出後は約9割まで急増している。車両の実働率については、2月には4割程度の実働率だったが、5月以降は約5%まで減少し、バスがほぼ動いていない状況となった(図28)。
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