“着る”歩行支援ロボットを2021年夏に発売へ、人の動作を見極めて正しく支援:ロボット開発ニュース
人に優しいウェアラブルロボットの開発を推進する信州大学発のベンチャー企業であるAssistMotion(以下、アシストモーション)は2020年10月28日、ビジネスインキュベーターのケイエスピー(KSP)とセキュリティのラックから出資を受け、“着る”歩行支援ロボット「curara(クララ)」を2021年夏に製品化すると発表した。
人に優しいウェアラブルロボットの開発を推進するベンチャー企業であるAssistMotion(以下、アシストモーション)は2020年10月28日、ビジネスインキュベーターのケイエスピー(KSP)とセキュリティのラックから出資を受け、“着る”歩行支援ロボット「curara(クララ)」を2021年夏に製品化すると発表した。
“着る”をコンセプトにした歩行支援ロボット
アシストモーションは、信州大学の繊維学部におけるロボット研究の成果を社会に還元するために2017年に設立された信州大学発のベンチャー企業である。ロボット技術は織機開発などの派生で培われたものだが、繊維学部としての知見を生かし「衣服感覚で着用できる“着る”ウェアラブルロボット」の開発に取り組んでいることが特徴だ。開発した製品の1つがロボティックウェア「curara」である。
「curara」は、一人で立つことはできるものの歩くことに負担を感じる要介護者や、登山などの「歩行を支援する」ということをターゲットとした歩行アシストウェアである。ちなみに「curara」という名前は、アニメ「アルプスの少女ハイジ」に出てくる身体が弱く車いすに乗っていた少女「クララ」から着想を得たという。
アシストモーション 代表取締役 橋本稔氏は「2008年から開発を開始したが当時は13kg以上と非常に重いもので“着る”というコンセプトとは離れていた。少しでも軽くてよい装着感が得られるウェアラブルロボットを作りたかった。そこで非外骨格型の構造とし、人に優しく合わせる同調制御法などを開発した」と語っている。
「curara」は、「動きやすさ」を追求するために、下半身全てを固定し自立する「外骨格型」ではなく、股関節と膝関節を左右4つのモーターで支援する「非外骨格型」を採用。モーター周りの軽量化などを進め、重さは4.5kgまで抑えることができたという。人の動作の検知はモーター内に搭載した力覚センサーで行う。4つのモーター部で検知した動きを組み合わせ、数理モデル化した神経振動子(生体で一定のリズムで動作する運動を生成するパターン発生器)を生成し、これを基に最適な歩行制御を行うという仕組みである。
「この神経振動子をそれぞれのモーター部に持たせており、これにより自然な人間の動作モデルを構築できることから、人の動きに同調しすぎることなく、最適な形で支援することができる」と橋本氏は強みについて述べている。
歩行支援ロボットは競合製品も数多く出ているが「非外骨格型を採用したことで軽量で拘束感が少ないという点、股関節と膝関節の両方をサポートすることにより起立や着座、段差を降りることなども的確に支援できる点が現状の差別化のポイントだと考えている」と橋本氏は述べている。
新たに2社から6000万円の出資
この「curara」の製品化に向けて、新たにケイエスピーとラックの2社から新たに6000万円の出資を受ける。ケイエスピーはかながわサイエンスパークを母体としてビジネスインキュベーションを推進しており「さがみロボット産業特区」や「Kawasaki Deep Tech Accelerater」などでの「curara」の実績から投資を決めたという。ケイエスピー インキュベート・投資事業部 担当部長でインキュベーション・インベストマネージャーの飯沼契氏は「衣服感覚で身に付けるロボットの実現というコンセプトや、人と協調したアシスト制御方法が他のロボット企業と一線を画している」と語っている。
またラックはサイバーセキュリティ事業を中核としているが2018年度から新規事業開発を強化しており、その1つのテーマとして「セーフティ」を位置付けている。特にスマートシティーなどにおける地域の安全安心に貢献する技術や事業の育成に力を入れており、今回のアシストモーションへの出資はその一環だという。ラック 新規事業開発部 部長の又江原恭彦氏は「出資先というだけでなく、『curara』の機能拡張を進める中で、デバイスの稼働監視や異常データの収集や活用などの点で、一緒に製品価値や事業の拡大に貢献していく」と述べている。
今後に向けては、現在行っているプロトタイプの有償モニター貸し出しの成果を見ながら、2021年夏頃の本格発売を目指すという。有償モニターでは初期費用6万円、レンタル料が月額8万円としているが「本番でもそれに近い費用感を実現したい」(橋本氏)としている。
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