3Dプリンティングの未来は明るい、今こそデジタル製造の世界へ踏み出すとき:3Dプリンタ インタビュー(3/3 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、サプライチェーンが断絶し、生産調整や工場の稼働停止、一斉休業を余儀なくされた企業も少なくない。こうした中、サプライチェーンに回復力と柔軟性をもたらす存在として、あらためて3Dプリンタの価値に注目が集まっている。HP 3Dプリンティング事業 アジア・パシフィックの責任者であるアレックス・ルミエール(Alex Lalumiere)氏と、日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏に話を聞いた。
金属3Dプリンタの開発状況を含む最新の研究開発
――HPでは、今どのような研究開発に取り組んでいるのでしょうか。また、金属3Dプリンタ「HP Metal Jet」の開発状況を教えてください。
ルミエール氏 まず、ソフトウェアの面では、複数台のMulti Jet Fusionを1つの集まり(fleet)として捉え、統合的に3Dプリンティングプロセスを最適化したり、造形品質や生産量をコントロールしたりできる機能を開発している。また、材料の面では新材料として「ポリプロピレン(PP)」の準備を進めている。これにより、家電、医療、自動車といった幅広い用途、目的にアプローチできるようになるだろう。
金属プリンタのMetal Jetは、開発パートナーであるGKN Powder MetallurgyとParmatechとともに、長期間にわたり検証、開発を進めているところだ。従来の金属3Dプリンタの世界に創造的破壊をもたらすことになるだろう。現在は、開発パートナー2社の工場にある装置を用いた造形サービス「Metal Jet Production Service」を展開している段階にある。一般販売を行う予定の2021年(※2)に向けて、検証、開発を急ピッチで進めている。
※2:アジア・パシフィック/日本での一般販売は2021年後半を予定。
秋山氏 今、話のあった新材料のPPについては、正式販売開始に向けて、パートナーである八十島プロシードを通じた試験造形を開始している。ここでの声や要望を材料開発にフィードバックし、新材料としてさらに良いものに仕上げていく考えだ。ちなみに、新材料のリリース前に、パートナーとともに検証、開発するケースは過去もあったが、日本企業が材料開発におけるパートナー(βカスタマー)に選定されたのは今回が“初めて”だ。これは、日本の製造業が、HPの3Dプリンタ戦略の中で非常に重要な位置付けにある表れといえる。
もう1つ、現在準備を進めているのが「HPプロフェッショナルサービス」だ。先ほどの話の中にもあったが、3Dプリンタの導入・適用をお客さま自身で全て行うのは非常に大変な作業になる。自分たちが開発する製品のどの部品(部分)が3Dプリンタに適しているのか、それを3Dプリンタで製造するためにどのように設計を最適化すべきか(DfAM)、検討しなければならないことが多く、そのハードルも高い。HPプロフェッショナルサービスでは、こうした3Dプリンタ導入・適用時の困りごとを解決できるサービスをメニュー化してお届けする。こちらはパートナーのSOLIZE Productsとともに準備を進めており、近々開始できる見込みだ。
今こそ、デジタル製造の世界へ踏み込むタイミング
――最後に、日本の製造業へ向けてメッセージをお願いします。
ルミエール氏 既に、HPの3Dプリンティング技術、Multi Jet Fusionによって、ワールドワイドで1500万点以上ものパーツが製造されており、実用に耐え得るパーツを供給でき、大量生産に対しても適用できる能力が証明されている。
また、今回のCOVID-19により、3Dプリンティングが製造現場で使えるテクノロジーであることがあらためて証明されたといえる。これからは以前にも増して、サプライチェーンの回復力と柔軟性が求められる。今こそ、デジタル製造の世界へ踏み込むべきタイミングといえる。
3Dプリンタを活用したデジタル製造によるイノベーション創出を考えているのであれば、ぜひそのお手伝いをさせてほしい。われわれには、そのために必要なテクノロジーやサービスがあり、エキスパートがそろっている。
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