後発でも勝負できる! HPの3Dプリンティング事業が目指すもの:HP Jet Fusionシリーズ(1/4 ページ)
参入から数年、同社の3Dプリンティング事業は今どのような状況にあるのだろうか。HP Jet Fusionの優位性、新シリーズの特長、そして金属3Dプリンタへの取り組みについて、日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏に話を聞いた。
日本HPが新たな3Dプリンティングソリューション「HP Jet Fusion 5200シリーズ」(以下、HP Jet Fusion 5200)と、「HP Jet Fusion 500シリーズ」(以下、HP Jet Fusion 500)を発表した(関連記事:日本HP、大量生産向け/フルカラー造形対応の3Dプリンタ新シリーズを投入)。現在主力の「HP Jet Fusion 4200シリーズ」(以下、HP Jet Fusion 4200)に、これら新シリーズが加わることで、試作から量産までを一気通貫でカバーできる製品ラインアップを取りそろえたわけだ。
参入から数年、同社の3Dプリンティング事業は今どのような状況にあるのだろうか。HP Jet Fusionの優位性、新シリーズの特長、そして金属3Dプリンタへの取り組みについて、日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏に話を聞いた。
HPの3Dプリンティング事業の狙いと優位性
――あらためてHPの3Dプリンティング事業について教えてください。
秋山氏 HPは2016年から3Dプリンティング事業を開始し、日本国内では2017年から事業をスタートさせている。3Dプリンタはあらゆる産業分野でポテンシャルがあるが、HPとしては特に「自動車/輸送機」「工作機械/ロボット」「医療」「コンシューマー製品」の4分野にフォーカスしている。
自動車/輸送機分野に関しては、電気自動車(EV)向けパーツでの3Dプリンタ利用が伸びるだろう。EVは従来のガソリン車よりも熱要件なども厳しくないため、広い範囲で樹脂製のパーツが使えるようになる。さらに、設計そのものも大きく変わるため、3Dプリンタの適用範囲は広いと考えている。
工作機械/ロボット分野では、特に柔軟な生産ラインの実現に3Dプリンタが生かされるだろう。例えば、ロボットのハンドツールを3Dプリンタで製造し、それらを使い分けることで、同じ生産ラインでも異なるモノが作れるようになる。実際、HP Jet Fusionで製造したクリッパーが、HPの生産ラインで使われている。
さらに、医療分野での利用も急速に伸びている。日本国内では法整備の関係であまり進んでいないが、欧米では歯の矯正や義肢装具といった領域での3Dプリンタ活用が盛んに行われている。
コンシューマー製品もシューズのインソールや眼鏡のフレームなど、海外ではマスカスタマイゼーションされた最終製品の製造に3Dプリンタが活用され始めている。この辺りも欧米が先行している領域だ。
――これらの領域に対するHP Jet Fusionの優位性はどこにあるのでしょうか?
秋山氏 後発という位置付けではあるが、HPとして3Dプリンティング事業の成長に向けた技術開発にしっかりと投資し、本格的な製造装置として使えるモノとしてHP Jet Fusionを世に送り出したいと考えていた。
HP Jet Fusionの造形方式は他の3Dプリンタと比較してユニークで、樹脂粉末に対して、プリントヘッドから複数のエージェント(インク)を精密に打ち分ける。ここにHPが長年2Dプリンタで培ってきた技術が生かされている。現状のHP Jet Fusionに搭載されているプリントヘッドは、2Dの大判プリンタに入っているものとほぼ同じものだ。
これまで2Dプリンタを中心に培ってきた社内のノウハウ、技術、特許などがダイレクトに生かせるのは、他社にはない強みといえるだろう。
また、最終製品が作れることは大きなメリットだ。従来は3Dプリンタで試作した後、量産のために金型を起こして……と、結局のところ時間とコストの削減につなげることができなかったが、HP Jet Fusionであれば3Dデータがあれば試作から製造まで同じ装置で実現できる。最終製品の製造や量産を前提に使っていただくと、HP Jet Fusionの利点が最大限に生かせるだろう。
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