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後発でも勝負できる! HPの3Dプリンティング事業が目指すものHP Jet Fusionシリーズ(2/4 ページ)

参入から数年、同社の3Dプリンティング事業は今どのような状況にあるのだろうか。HP Jet Fusionの優位性、新シリーズの特長、そして金属3Dプリンタへの取り組みについて、日本HP 3Dプリンティング事業部 事業部長の秋山仁氏に話を聞いた。

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国内外の活用事例、最大のユーザーはHP!?

――量産や最終製品の製造で使われているユニークな事例などはありますか?

秋山氏 HP Jet Fusionの導入は国内外で順調に伸びており、3割以上の企業で複数台を稼働させている。それも2、3台というレベルではなく、それよりも大きな規模だ。例えば、歯科訪問なしで歯の矯正アライナーを提供するビジネスモデルを確立したベンチャー企業のSmileDirectClubは、現在HP Jet Fusion 4200を49台導入し、1日当たり5万個、年間約2000万個の生産体制を構築し、エンドユーザーの歯型を製作している。

SmileDirectClubの事例(1)SmileDirectClubの事例(2)SmileDirectClubの事例(3) HP Jet Fusion 4200を活用するSmileDirectClubの事例 出典:HP ※クリックで拡大

 SmileDirectClubは現時点でHP Jet Fusionの最大ユーザーだが、起業当初は4台から始まった。意思決定の早いベンチャー企業が、新しいビジネスモデルを一気に立ち上げ、事業を拡大していく際に、HP Jet Fusionのメリットがぴったりとマッチした。

 余談だが、現在、HPとSmileDirectClubは地球環境保護の取り組みにも挑戦している。SmileDirectClubは非常に大規模な量産を行っているため、材料の使用量も多い。通常、造形後に残った粉末材料のほとんどは再利用可能だが、わずかに廃棄材料が残っていた。これまでは廃棄していたが、これらを回収して射出成形用のペレットに再加工している。

HP Jet Fusion 4200で製造された、BMWのスポーツカー「i8 ロードスター」のウィンドウガイドレール
HP Jet Fusion 4200で製造された、BMWのスポーツカー「i8 ロードスター」のウィンドウガイドレール 出典:HP ※クリックで拡大

 他にも自動車業界での活用も挙げられる。BMW「MINI」のオーナー向けサービスとして内装パネルのカスタムパーツ製造にHP Jet Fusion 4200が採用された他、同じくBMWのスポーツカー「i8 ロードスター」のウィンドウガイドレールを含む4つのパーツ製造にも使用されている。後者の事例では金属部品を樹脂に置き換えただけではなく、形状最適化を施すことで強度を維持したまま大幅な軽量化を実現した。ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化に代表される形状は3Dプリンタと非常に親和性が高く、HP Jet Fusionであれば試作で終わりではなく、実際に最終パーツとして造形できるため、極めて利用価値が高い。

 加えて、アフターパーツへの適用も注目されている。海外の自動車メーカーでは、生産終了した自動車の部品をどのように調達するかが課題になっている。既に金型がなかったり、破損していたりと同じものを入手するのが困難だからだ。ここに3Dプリンタを活用しようという流れが生まれ、アフターパーツ市場で盛り上がっている。

 対して、日本ではティア1、ティア2サプライヤーが自動車メーカーのために金型を大量に保管していることが多く、3Dプリンタ活用があまり話題になってこなかった。しかし、金型管理の適正化の流れを受け、ここ最近国内でも一気に関心が高まっている。

HP Jet Fusionの自動車部品への適用について
HP Jet Fusionの自動車部品への適用について 出典:HP ※クリックで拡大

 また、ユニークといえばHP自身が、自社製品の製造工程の中でHP Jet Fusionを活用している点だ。一部製品のパーツ、アフターパーツの製造に生かしつつ、そこで得たノウハウを顧客や自社の製品開発にフィードバックしている。もしかすると、われわれ自身が最大のユーザーかもしれない。

――国内での導入状況や取り組みについて教えてください。

秋山氏 国内では、装置を社内に導入する前に、事前に技術検証を行いたいと考える企業が多い。そうしたニーズに応えるのが、3Dプリンタを活用した造形受託サービスを行うサービスビューローの存在だ。現在、大手のサービスビューローであるDMM.com、SOLIZE Productsや八十島プロシードでHP Jet Fusionが導入されている。

 一方、既に最終製品の製造にHP Jet Fusionを活用するケースもある。警備用品などを手掛ける金星では、小ロット製品の金型製作費や設計変更コストに課題を感じ、HP Jet Fusionを活用した直接製造に切り替えた。その結果、パーツ数や組み立て工数が減り、期間とコストが削減できた。また、武藤工業でも生産終了したペンプロッターのアフターパーツの製造にHP Jet Fusionを活用し、金型レス、在庫レスでのアフターサービスを実現している。

国内における最終製品への適用事例
国内における最終製品への適用事例 出典:HP ※クリックで拡大

 HP Jet Fusionは企業規模問わず活用していただけるものだが、自社で設計から販売までを行っている企業は、3Dプリンタによるモノづくりのメリットを最大限に引き出せるのではないだろうか。特に製造を外部に頼っている企業との親和性は高い。

 このように活用が進む中、HPはSOLIZE Productsとのコンサルティングサービスも展開する。例えば、「自社製品のアフターパーツを3Dプリンタで」となった場合、どのパーツがHP Jet Fusionでの造形に置き換えられるかのノウハウがユーザー側にはない。こうした3Dプリンティングの適用を両社で共同提案する。おかげさまで、サービス開始以来、多くの製造業から引き合いがある状態だ。

 必ずしも装置を自社で持つことが最善の選択肢とは言い切れない。生産数量によってはサービスビューローにお願いした方がよいケースもある。また、3Dプリンタならではのモノづくりのノウハウを一から蓄積するのは困難なので、専門家の知見を借りてしまった方がスムーズに目的が達成されるかもしれない。HPとしては自社導入やサービスビューローの活用、双方において質の高い支援を行っていく考えだ。

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