コロナ禍で再認識された3Dプリンタの価値、製造業の成長とイノベーション創出に欠かせない存在に:HP INNOVATION SUMMIT 2020 ASIA(1/2 ページ)
HPは、グローバルイベント「HP INNOVATION SUMMIT 2020 ASIA」をオンライン開催した。同イベントでは、HPが行ったデジタルマニュファクチャリング/産業用3Dプリンティングに関する調査レポート「HP Digital Manufacturing Trend Report」の内容に触れつつ、3Dプリンタをはじめとするデジタルマニュファクチャリング技術を活用するパートナー企業やユーザー企業を招き、ディスカッションが行われた。
HPは2020年10月15日、グローバルイベント「HP INNOVATION SUMMIT 2020 ASIA」をオンライン開催した。同イベントでは、HPが行ったデジタルマニュファクチャリング/産業用3Dプリンティングに関する調査レポート「HP Digital Manufacturing Trend Report」の内容に触れつつ、3Dプリンタをはじめとするデジタルマニュファクチャリング技術を活用するパートナー企業やユーザー企業を招き、ディスカッションが行われた。
「The Future of Advanced Manufacturing」をテーマに行われた、デジタルマニュファクチャリング/産業用3Dプリンティングに関するディスカッションでは、HPの他、日本からはパートナー企業を代表してSOLIZE Productsが、ユーザー企業を代表して日産自動車が参加した。本稿では、その模様をダイジェストでお届けする。
オンラインで開催された「HP INNOVATION SUMMIT 2020 ASIA」。画面右側の4人が「The Future of Advanced Manufacturing」のパネリストとして登壇。左上:HP 3Dプリンティング事業 アジア・パシフィック責任者のアレックス・ルミエール氏/右上:SOLIZE Products 代表取締役社長の田中瑞樹氏/左下:日産自動車 総合研究所 先端材料・プロセス研究所 エキスパートリーダの南部俊和氏/右下:IDC Insights アジア・パシフィック マネージングダイレクターのクリストファー・ホルムズ氏 [クリックで拡大]
COVID-19が3Dプリンタの価値を再認識する機会に
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大を機に、人工呼吸器をはじめとする医療機器や、フェイスシールドに代表される個人用防護具(PPE)などが不足し、各地で3Dプリンタを活用した支援活動が行われたことは記憶に新しい。
HPを例に挙げると、グローバルで展開する「デジタルマニュファクチャリングネットワーク」の認定パートナーらと協力しながら、検査用スワブ、フェイスマスク、フェイスシールド、マスクアジャスタ、ハンズフリードアオープナー、人工呼吸器用部品といった支援物資を、同社の産業用ハイエンド3Dプリンタ「HP Jet Fusion 5200」などを用いて製造し、世界各地の医療機関に届けた。
この出来事によって、予測不能な事態に陥り、サプライチェーンが断絶したとき、3Dデータの受け渡しのみで製造を開始できる、部品を調達できる3Dプリンタの価値が再認識され、企業における3Dプリンタ活用をあらためて検討する機会を生んだ。
HPが世界中の製造業のエグゼクティブ2000人以上を対象に行った調査(HP Digital Manufacturing Trend Report)によると、回答者の99%が「デジタルマニュファクチャリング技術が経済成長につながり得る」と答えたという。
この結果について、HP 3Dプリンティング事業のアジア・パシフィックの責任者であるアレックス・ルミエール(Alex Lalumiere)氏は「3Dプリンティング/アディティブマニュファクチャリングの世界にとって、COVID-19は重大な転機になったといえる。コロナ禍の医療支援活動において、HPとそのエコシステムによって400万点以上のパーツ製造を行った。このようなムーブメントは特にアジア地域で盛んに行われた。そして、こうした3Dプリンタを活用したパーツ製造の流れは、withコロナ/afterコロナの時代においても継続していくだろう」とし、さらに同レポートにおいて、85%の回答者が「アディティブマニュファクチャリングへの投資を増加する予定である」ことを紹介した。
自動車産業における3Dプリンタ活用の期待
一方、「100年に一度の大変革期」を迎えようとしている自動車業界は、今後5年間で最もイノベーションが期待できる産業の1つといわれている。
自動車産業における3Dプリンタ活用の期待について、日産自動車 総合研究所 先端材料・プロセス研究所 エキスパートリーダの南部俊和氏は「まず、フレキシブルでアジャイルな製造の実現が挙げられる。従来の大量生産を前提とした金型によるモノづくりに対して、3Dプリンタを活用した製造は金型レスで、柔軟かつ迅速な多品種少量生産が可能になる。さらに、従来の製造方法では実現困難、あるいはコストのかかる複雑な形状を製造できることも3Dプリンタ活用のメリットといえる。今後の自動車開発において、軽量化や効率化はますます求められていく。そうしたニーズに対して、3Dプリンティング技術が果たす役割は大きいと期待している」と語る。
自動車産業における3Dプリンタ活用の期待は、従来の業務プロセス、あるいはビジネスモデルの変革にもつながるものといえる。HPのレポートにおいても、89%が3Dプリンティング/デジタルマニュファクチャリング技術によって、「自社のビジネスモデルの進化を目指している」と回答。さらに前述の通り、投資についても前向きな傾向であり、「従来の製造方法に対する実行可能な選択肢/従来の製造方法の予備的手段になる」との多くの回答が得られたという。
こうした意識の変革について、IDC Insights アジア・パシフィック マネージングダイレクターのクリストファー・ホルムズ(Christopher Holmes)氏は「近年のデジタルマニュファクチャリングの採用速度を見ていると、アディティブマニュファクチャリングが創造的破壊(ディスラプション)につながっていることがよく分かる。また、単に製品開発の中に3Dプリンタが入ってきたというだけでなく、3Dプリンタというテクノロジーを活用するための設計という視点、そこに材料技術が組み合わさることで従来にないモノづくりが実現可能となる。そして、それに伴い、3Dプリンタを取り巻くエコシステムも進化していく」とし、今後は製造業だけでなく、それ以外の業種・業界においてもデジタルマニュファクチャリングによる創造的破壊が波及していくとの見解を述べた。
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