2020年末にローカル5Gの周波数帯域が大幅拡大、非同期運用も検討が進む:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
「Local 5G Summit」の講演に、第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF)の事務局長を務める大村好則氏が登壇。ローカル5Gの普及促進に向けて、5GMFの地域利用推進委員会が進める取り組みや検討が進むユースケースなどについて紹介した。
ローカル5Gの低遅延性能はWi-Fi 6を大きく上回るも「課題はコスト」
ローカル5Gの導入に関しては、その概要や、免許の申請手続き、事業者などとの連携に対する考え方を明確化するため、2019年12月にガイドラインが策定された。このガイドラインの中で、ローカル5Gの免許主体については、当面「自己の建物内」または「自己の土地内」での利用を基本としている。建物や土地の所有者は自らローカル5Gの無線局免許が取得できるが、一方で通信キャリアなどが直接免許を取得することは不可能となっている。
総務省では、ローカル5Gの制度化に先駆けて、2017〜2019年度の3年間をかけて全国5Gの総合実証試験を実施した。大村氏は、「全国5Gで行った実証試験の結果は、今後のローカル5Gの導入を検討する場合に役立つはずだ」として、各年度の実証試験の内容を説明した。例えば、2018年度の実証試験は13プロジェクトを実施し、ICTインフラ地域展開戦略検討会が掲げる「8つの課題」に対応するテーマに取り組んだ。2019年度は、防災、教育など多数のジャンルにわたって23のプロジェクトを進め、地域の課題と解決を目的とした性能評価を行っている。
ローカル5Gを、免許不要のWi-Fi 6と比較すると、周波数の帯域、認証方法、通信遅延などが異なる。特に通信遅延については、eMBBで4ms、URLLCで1msとローカル5Gに有利な数字(Wi-Fi 6は20〜30ms)が報告されている。安定性やセキュリティレベルについてもローカル5Gの方が高い。ただし、導入コストも高額となるため、「利用に当たっては機材の低コスト化が今後一番の課題になってくるだろう」(大村氏)と指摘する。なお、電波利用料は、基地局が年間2600円、端末が同370円となっている。
ローカル5Gのユースケースは、働き方から教育、医療・介護、地域ビジネス、観光、スマートシティー、農林水産業に至るまで幅広い分野の課題解決を目指しており、さまざまな取り組みが推進されている。特に活用が大きく期待されているのが工場関連だ。
例えば、京セラは「工場設備稼働状況の把握と予知保存」にローカル5Gを利用しており、ネットワークの無線化で配線が不要になるとともに、多数の機器との接続が可能になった。さらに、より細かなデータの収集によって高精度の監視と分析が可能になり、低遅延での正確な機器制御や緊急時の即時制御も行える。そして、データ分析によって異常を予測し、設備の適切な保全が可能になるとしている。
協和エクシオは「閉空間(地下軌道)の保守および監視対応」でローカル5Gを利用している。高齢化や熟練者のリタイアなどによって、保守や監視の作業における労働環境は厳しくなっている。そこで、高度化する保守内容を少ない要員で対応するとともに、早急なトラブル対応も可能にするようなシステムの開発を行っている。
これらの他、「人流・物流の安全保安環境のICT化」として、空港などの移動拠点でのセキュリティ強化に向け、監視員のリソース不足対応や物流識別に伴う確認、個別配送による非効率化解消などを目指したユースケースを紹介。「医療(感染症対策)の高度化」を目指したシステムでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を防ぐ目的から体温の高い人の入場規制を行うために、自走式ロボットで入場者把握と体温測定を実施することでスムーズな入場と体温計測の人的負担軽減を実現できるとしている。農業分野では「農作物生産現場の高度化」、自治体関連では「自治体避難所の情報伝達」「過疎地対策に向けたICT環境整備によるまちづくり」などのユースケースがある。
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