シャープのAGV事業が成長する理由、コアは生産技術と集中制御システム:無人搬送車(2/2 ページ)
シャープのAGV(無人搬送車)事業が好調だ。2017年から本格的に外部販売を開始して以降、市場拡大以上のペースで順調に成長を続けているという。シャープのAGVへの取り組みについて、シャープ ビジネスソリューション事業本部 システムソリューション事業部 商品企画部 課長の井上克己氏に話を聞いた。
小規模の単体需要を狙う製品を用意
AOSテクノロジーを核に提案を進めるシャープだが、今後はさらにカバー領域を広げていく方針だ。1つは、単体での導入なども想定したより小規模の領域である。そのポイントとなるのが、2020年7月に発売した「TYPE LC」と専用ソフトウェア「Easy Course Editor」の組み合わせである。
「シャープではAOSテクノロジーを核としてより複雑な案件をターゲットと位置付けてきた。そのため、システム設計やシステムインテグレーションが必要で、3〜20台のAGVを同時に稼働させる中規模領域が主要顧客層となってきた。しかし、無人搬送市場そのものが広がり、従来はAGVを使用していない顧客などが単体などで導入するニーズなどが増えてきた。これらに応える単体パッケージ製品を用意した」と井上氏は狙いについて語る。
「TYPE LC」は磁気テープで設定した軌道上を走る有軌道タイプのAGVで、本体サイズは550×250×1083mm、最大積載許容荷重70kg、最大潜り込みけん引重量は100kg、最大引っ張りけん引重量は250kgの性能を持つ。この「TYPE LC」と組み合わせる専用ソフトウェア「Easy Course Editor」は、タブレット端末に搭載し、シンプルなタッチ操作で簡単なコース設定や、最大64通りのコース登録が行えるというものだ。ユニットオプションなども豊富に用意し、ユーザーは選択するだけでAGVを使用できるようになる。
「AOSはユーザー側では設定できず、従来は基本的にはAGVのカスタムやシステム設計が必要だった。しかしそれでは中小製造業など価格帯に折り合わない層も多かった。また単体で導入したいという声もあり、シンプルでユーザー側で設定などを容易に行えるシステムが求められていた」と井上氏は語る。これにより、単体で導入するような小規模領域を新たにカバーしていく方針である。
自動倉庫と組み合わせた大規模ソリューション
小規模層への拡大と同時に、自動倉庫などを組み合わせた大規模領域への拡大も目指していく。「搬送の抜本的な省力化に向けて、大規模な自動倉庫を導入するケースなども増えてきている。AOSを連携させることで自動倉庫からさらに搬送までを一連のシステムとして提案できるようになる。これらの強みを生かし自動倉庫市場への取り組みを進めていく」と話している。
既に案件化も進んでいるという。「2020年前半には自動倉庫関連での納入実績ができており、案件数も増えてきている。大規模領域はまだこれからの市場だが、シャープとしての地位を確立していきたい」と井上氏は今後について述べている。
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