「誰かのためのDIY」を後押し、パナの「D+IO」が目指す新しいモノづくりの輪:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
パナソニックは「他人のためのモノづくり」を促進するモノづくりプロジェクト「D+IO」を展開中だ。GitHub上に公開された「レシピ」を基に、役立つ電子工作デバイスを自作できる。これまでに「CO2換気アラートデバイス」と、ハムスターなどの健康管理が行える「小動物ヘルスケアデバイス」のレシピを公開した。
「大切な人に届ける」モノづくりを応援するプロジェクト
パナソニックの未開拓領域を開発する
D+IOを展開するのは、パナソニックのデザイン本部に設置された「FUTURE LIFE FACTORY(FLF)」である。FLFは将来の社会課題などを予測するとともに、新規事業創出につながる未開拓領域を他社に先行して開発することを使命とする。チームメンバーはパナソニック全社のデザインセンターから横断的に集められており、現在6人が在籍中だ。
「D+IO」のDにはDeverop(開発)、Design(設計)などクリエイティビティに関わるさまざまな意味が込められている。また、IOは「It Ourselves」で「私たちの力で、私たちのために」という意味と、入出力系を表す「I/O」を掛けているという。
プロダクトのカスタマイズ性を重視
D+IOの基本コンセプトについて、川島氏は「D+IOは『大切な人に届けるモノづくり』を応援する活動だ。DIYと呼ばれるモノづくり活動は、これまでどちらかといえば自分の使う分だけを作る『自分のためのモノづくり』という意味合いが強かったように思う。しかし、コロナ禍では、手作りのマスクやフェイスシールドを身近な人に贈るケースが多く見られた。この先の社会でも、誰かにプレゼントしたくなるようなモノづくり、贈り先の人を考えたモノづくりの重要性は増していくと考えている」と説明する。コロナ禍での生活に悩む人を支援したいという思いも重なり、プロジェクトの立ち上げから第1弾のレシピ公開まで約2カ月と、短期間で迅速に進めたという。
D+IOはプロダクトのカスタマイズ性やアップデート性も重視する。例えば小動物ヘルスケアデバイスは、飼育するペットの種類に合わせてセンシング端末の設置方法を工夫する必要がある。小鳥の体重測定を行う際に、体重測定機を地上ではなく、止まり木に設置するなどだ。こうした個別のカスタマイズに関する知見は、デバイスを撮影した画像を専用のハッシュタグを付けてSNSに投稿することで、多くの人に共有することができる。
また、GitHubでは投稿されたコンテンツ内容を各ユーザーが編集できる仕組みを採用しており、このため、D+IOのレシピもユーザーが自由に共同編集できるようになっているという。「ユーザー側から『こうした方が設計上面白いのではいか』といった提案をぜひしてもらいたい。一般的にGitHubはモノづくりの用途で注目されることは少ないが、実は『みんなでモノづくりをする』という目的に適したプラットフォームだと思う。まずはエンジニアやクリエイターなどのモノづくりができる人々にプロジェクトの存在を認知してもらい、将来的には電子工作に慣れ親しんでいない層も取り組むようになってほしい」(川島氏)。
D+IOがもう1つ意識するのが、「ペットの健康管理」のように、これまでパナソニックが積極的に取り組んでこなかったニッチ領域の開拓だ。「D+IOは新規事業の種子を発見するプロジェクトでもある。従来ニッチと思われていた領域が、実は案外、潜在需要の大きい市場だったと判明することもあり得る。とはいえ、現時点で、新規事業創出そのものを目標とした活動を行っているわけではない。あくまで、プロジェクトを進める過程でヒントを発見できればと考えている」(川島氏)。
今後D+IOでは、2020年度中に第5弾までレシピを発表する予定。内容は未定だが「高齢者や近所の人に贈りたくなるようなプロダクト、といった方向性も検討している」(川島氏)という。
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