IoTサービスの統合開発環境を提供する「Vieurekaプラットフォーム」の可能性:人工知能ニュース
パナソニックは2020年9月23日、エッジAIカメラ「Vieureka」シリーズ上で動作するアプリケーションの管理、開発環境をクラウド上で提供する「Vieurekaプラットフォーム」のオンラインセミナーを開催した。セミナーではVieurekaプラットフォームの採用事例として、顔認証機能を用いたIoTサービスがワンストップで導入できる「IoTスターターパック Vieureka顔認証スタートパック」なども紹介した。
パナソニックは2020年9月23日、エッジAI(人工知能)カメラ「Vieureka」シリーズ上で動作するアプリケーションの管理、開発環境をクラウド上で提供する「Vieurekaプラットフォーム」のオンラインセミナーを開催した。セミナーではVieurekaプラットフォームの採用事例として、KYOSOが開発した、顔認証機能を用いたIoT(モノのインターネット)サービスがワンストップで導入できる「IoTスターターパック Vieureka顔認証スタートパック」なども紹介した。
仕掛品の滞留状況を可視化するサービスなども利用
Vieurekaプラットフォームは、「VRK-C301」をはじめとするVieurekaシリーズのエッジAIカメラと、カメラやアプリケーションの保守/管理用SaaS(Software as a Service)「Vieureka Manager」、アプリケーション開発用のSDK(Software Development Kit)で構成されている。
Vieurekaカメラで撮影した映像をアプリケーションで分析することで、小売店舗での来店客数のカウントや属性分析の他、介護施設内にいる入居者の安否確認や、企業オフィスの入退室管理などに活用できる。
また、製造現場での活用も想定している。パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト 総括担当の宮崎秋弘氏は「現在、ビーコア、ブレインズテクノロジーの2社をはじめとしたパートナー企業と工場向けソリューションの開発を進めている。ビーコアは、Vieurekaカメラを活用して仕掛品の滞留状況などをデータベース化するソリューションを既に商品化済みだ。また、ブレインズテクノロジーとは、同社開発の異常検知向け機械学習ソリューション『Impulse』とVieurekaカメラを連携させる取り組みを進めている」と語った。
領域横断的なIoTサービスが開発可能なプラットフォーム
セミナーではVieurekaプラットフォームの導入例として、KYOSOが展開するIoTサービスブランド「IoT.kyoto」での採用事例も紹介した。KYOSOはIoT.kyotoを通じて、IoTデバイスの製作からセンサーで取得したデータ分析までをワンストップで実施するサービスなどを提供している。これらのサービスは、エレベーター保守点検のIoT化や、産業用ロボットの稼働状況をモニタリングするといった目的で、フジテックやユーシン精機など多数の企業で導入されている。
実際にVieurekaプラットフォームを取り入れて開発したサービスが「IoTスターターパック Vieureka顔認証ベーシックパック(以下、顔認証ベーシックパック)」だ。同サービスを利用することで、Vieurekaカメラで撮影した顔写真やメタデータなどをAWSの画像認識サービス「Amazon Rekognition」に送信し、顔認証を行う仕組みが容易に導入できる。その照合結果に基づいた制御信号を各種設備に送信し、規定の動作を自動実行させることも可能だ。
例えば、顔認証ベーシックパックを用いて、Vieurekaカメラを電子錠やフラッパーゲートなどの設備と連携すれば、企業オフィスの入退室管理や宿泊施設のチェックイン、チェックアウトなどの業務効率化に役立つ。電子錠との連携については、既にシンガポールのコワーキングスペースで導入事例があるという。この他にも、現在、KYOSOではVieurekaを用いて駐車場の空き状況を推論するシステムの開発なども進めているという。
また、KYOSOのエバンジェリストを務める辻一郎氏は、顔認証ベーシックパックは工場などの製造業の現場でも活用可能だと語る。「例えば、Vieurekaカメラで顔認証することで、工場などの外気侵入防止用の電動シャッターを自動開閉するシステムなどを構築できる。この他にも産業機器間のデータ通信プロトコルであるModbusを活用することで、エレベーターと連携した搭乗システムなども作れる」(辻氏)。
パナソニック テクノロジー本部 エッジコンピューティングPFプロジェクト 主務の茶木健志郎氏は「現在、さまざまなセンサーやエッジAIデバイスをクラウドと通信させて、新たなサービスを生み出そうとする動きが活発化している。しかし、実際にサービス構築を行うに当たっては、それぞれのデバイスに応じて、通信における最適な暗号化手法の選定や、データサーバの決定などを行わなければならない。どれか1種類のデバイス開発に精通した人は多くいるが、全てのセンサー、デバイス開発に通じている人はまれだろう。これが、複数のデバイスにまたがるIoTサービスの開発を妨げる障壁となっている。一方で、幅広いデバイスに対応する単一の統合開発環境を提供するVieurekaプラットフォームを使えば、こうした課題も解決可能となる」と語った。
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