パナソニックが超低遅延を実現する5G無線基地局を開発へ、カナダ企業と協業:製造業IoT
パナソニックとカナダのオクタジック(Octasic)は、5Gとその高度化技術であるBeyond 5Gの共同開発で合意したと発表。パナソニックはこれまでも、プライベートLTEなどに用いられているsXGP向けにオクタジックの技術を活用してきたが、その共同開発の範囲を5Gに拡張することで、需要の高まるローカル5Gなどにも適用できるようになる。
パナソニックとカナダのオクタジック(Octasic)は2020年9月17日、5Gとその高度化技術であるBeyond 5Gの共同開発で合意したと発表した。パナソニックはこれまでも、プライベートLTEなどに用いられているsXGP(shared eXtended Global Platform)向けにオクタジックの技術を活用してきたが、その共同開発の範囲を5Gに拡張することで、需要の高まるローカル5Gなどにも適用できるようになる。
今回の合意により、オクタジックの新世代SoC(System on Chip)「OCT3032」上に、両社のリソースと専門知識を掛け合わせ、5Gとその高度化技術を搭載した高信頼、低遅延および低消費電力の無線基地局プラットフォームを共同で開発することになる。これにより、B2Bや航空業界向け非地上ネットワーク、その他のミッションクリティカルな業界への適用を目指すという。
低遅延保証が求められる高度なIoT環境や非地上運用に貢献へ
パナソニックは、オクタジックのSoCに組み込まれた非同期マルチコアを最大限に活用するとともに、同社のLTE物理層ソフトウェアをsXGP向けに拡張することで、免許が不要な1.9GHz帯域など干渉が大きい環境でも安定した通信を実現するsXGPシステムを開発し、無人自動バレーパーキングシステムなどに利用してきた。
これまでの取り組みに加えて、5Gとその高度化技術に向けて、両社は互いに得意な技術を掛け合わせ、特に低遅延保証が求められる高度なIoT(モノのインターネット)環境や、非地上運用に貢献する無線基地局プラットフォームの共同開発を進める。オクタジックのオープンでプログラマブルなプロセッサプラットフォームは、独自の非同期マルチコアが特徴であり、パナソニックの無線基地局開発における高性能、低消費電力、ソフトウェアによる拡張性の要件を満たすとしている。
パナソニックは、移動通信技術分野における豊富な技術資源をオクタジックに提供し、迅速に3GPP準拠の超信頼性低遅延通信(UR-LLC:Ultra-Reliable and Low Latency Communications)機能の開発や非地上通信ネットワーク技術の開発を進める。両社は相互にビジネス展開ができるプラットフォームを構築しながら、社内外の実証を通じてさまざまなIoTアプリケーションの検証を行い、パナソニック自身と顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを加速する方針だ。
5Gは高速大容量通信だけでなく、多数同時接続、超低遅延という3つの特徴を有しており、あらゆるモノ・人などを安全に低コストでつないで、企業のビジネス構造のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるといわれている。日本国内では、企業や自治体などが個別のニーズに応じて敷地内で柔軟に自営の5Gネットワークを構築できるローカル5Gの制度も整備され、通信キャリア向けだけにとどまらない柔軟な機能を持った5G対応の無線基地局のソリューションの登場が期待されている。
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