大阪ガスがパナソニックのプライベートLTEを採用、コストはWi-Fiの10分の1:製造業IoT(1/2 ページ)
パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)は、同社の自営等BWAシステム(いわゆるプラベートLTE)事業の展開について説明するとともに、大阪ガス泉北製造所の第一工場(大阪府堺市)と第二工場(大阪府高石市)のスマートファクトリー化事例について紹介した。
パナソニック システムソリューションズ ジャパン(PSSJ)は2020年7月6日、オンラインで会見を開き、同社の自営等BWA(Broadband Wireless Access)システム(いわゆるプラベートLTE)事業の展開について説明するとともに、同日発表した大阪ガス泉北製造所の第一工場(大阪府堺市)と第二工場(大阪府高石市)のスマートファクトリー化事例について紹介した。
パナソニックは1950年にタクシー無線を開発してから、現在は国内シェアトップの防災無線をはじめとする自営無線事業で70年の歴史を有している。携帯電話機の普及が始まった1990年代からは、構内PHSシステムを用いて自営無線に音声通話を取り入れるなどしており、2018年4月には北海道岩見沢市におけるプラベートLTEを用いた農業IoT(モノのインターネット)の実証実験に向けて電気通信番号(PLMN-ID)を取得して、自営無線でも需要が高まっているデータ活用に向けた事業展開を広げている。
今回、PSSJのプライベートLTEを採用した大阪ガスの泉北製造所は、海外から輸入した液化天然ガスを原料に都市ガスを製造している。その敷地は、第一工場が28万1000m2、第二工場が73万3000m2、合計100万m2以上と広大だ。これまで同製造所では、災害時にも確実に通話ができるよう、敷地内における通信手段として構内PHSを使用していた。
しかし、その既存PHSシステムを新規格に対応させる必要があることに加え、デジタル化による業務効率化および円滑な技能伝承に向けて、ブロードバンドレベルのデータ通信が可能な環境への更新を検討していた。当初はWi-Fiを用いたシステムを検討していたが、基地局1台当たりの電波のカバー範囲が狭く(半径約100m)、多数の基地局が必要となるため、コストが大きな課題になった。
これに対してプライベートLTEは、1つの基地局で半径約2kmをカバーできるので基地局の設置数が少なくて済む。「屋外利用可能なWi-Fiの基地局から成るシステムと比べて、10分の1程度のコストで実現できた」(PSSJの担当者)という。また、固定回線並みの高速通信も可能で、下りで最大110Mbpsの通信速度を実現している。さらに、閉域網であるプライベートLTEとして、従来の構内PHSと同様に災害時にも確実につながる安定した通信環境も得られる。
現時点では、2020年7月1日付で大阪ガスの100%子会社である大阪ガスビジネスクリエイトが免許を取得した段階。同年8月から100万m2以上の敷地の通信カバー状況を確認した上で、点検作業の効率化や技術伝承の円滑化、緊急時対応の迅速化といったデジタル化の取り組みを進める考えだ。将来的には、大阪ガスグループの拠点間連携や、2019年3月に泉北製造所で導入した現場とセンターを音と映像でつなぐ「HDコムLive」との連携などを検討しているという。
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