手軽に設置できるAIカメラに新機種、処理性能3倍でPythonやAWS IoTにも対応:組み込み開発ニュース
パナソニックは2020年4月2日、画像処理をエッジコンピューティングで行う「Vieurekaプラットフォーム」で使用するカメラの新機種「VRK-C301」の提供を開始したと発表した。従来のVieurekaカメラと比較して、高性能CPUやGPUによって画像処理性能を強化し、より高度な分析を行えるようにした。
パナソニックは2020年4月2日、画像処理をエッジコンピューティングで行う「Vieurekaプラットフォーム」で使用するカメラの新機種「VRK-C301」の提供を開始したと発表した。
従来のVieurekaカメラと比較して、高性能CPUやGPUによって画像処理性能を強化し、より高度な分析を行えるようにした。また、Pythonへの対応や、AWS IoT GreengrassとAmazon SageMaker Neoの搭載などアプリケーション開発環境を充実させた。
Vieurekaプラットフォームは、エッジデバイスであるカメラと、クラウドで構成されている。クラウドにはカメラ側で処理した結果を集め、マーケティングや看護、介護、企業での入退室の管理など業種や用途に合わせたアプリケーションで分析する。カメラの分析機能はクラウドから新しい画像処理アプリケーションを配信してアップデートできる他、保守管理も遠隔から行うことができる。カメラではなく、動画から得られるデータを売るコト売りのビジネスだ。
開発パートナー拡大へ環境整備
このプラットフォームのうち、パナソニックが手がけるのはカメラ本体とアプリケーション開発用のSDK、カメラやアプリケーションを管理するVieurekaマネージャーのみだ。業種や用途に合わせたアプリケーションはパートナー企業が開発する。現在、ハードウェアメーカーやインテグレーター、AI開発会社など30社以上が参加している。Vieurekaプラットフォームのユーザー企業は、ゼロからアプリケーションを開発することなく、業務に画像認識技術を活用できる。
新機種のカメラは、CPUを従来の4コアから6コアに強化するとともに、GPUを新たに搭載した。処理能力が3.3倍向上し、同時に検出できる物体の数の増加や高解像度化、高フレームレート化が実現できるという。ディープラーニング(深層学習)の活用にも対応する。
Vieurekaプラットフォームのアプリケーション開発では、これまでC/C++言語しか対応していなかったが、Pythonへの対応や、AWS IoT GreengrassとAmazon SageMaker Neoの搭載によって開発環境を充実させる。これにより開発パートナー企業を増やしていきたい考えだ。
需要高まるAIカメラ
カメラの設置しやすさも改善した。本体のみで天井から吊り下げたり、磁石で簡易に取り付けたりすることができる。画像の縦横の向きも自由に変更できるようにし、撮影の自由度を高めた。また、これまではカメラの存在感や圧迫感があり、小売店舗などで目立ちやすいことが課題となっていた。新機種では無彩色の目立ちにくいデザインに変更し広角レンズだけでなく望遠レンズを搭載することで、遠くから撮影できるようにした。
パナソニック テクノロジー本部 事業開発室 エッジコンピューティングPFプロジェクト 総括担当の宮崎秋弘氏は、「監視カメラは6600万台強の市場規模が見込まれており、この内2〜3割がVieurekaのようなAIカメラとなる見通しだ。監視カメラは従来の機能ではニーズを満たせなくなっている。盗難対応で設置する密度が高まっていることに加えて、来店客の動きを分析して売り上げアップにつなげるなど防犯以外の用途でも使いたいという声が増えている。パートナー企業と協力してこの市場をとっていきたい」とコメントした。
Vieurekaプラットフォームは、カメラとPCを接続する旧来のシステム構成と比べて投資額が1〜2桁減らせる点も強みとしていく。
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