1台で月額1万円のAIカメラを96台導入するには:製造業がサービス業となる日(1/2 ページ)
パナソニックは2019年9月11日、画像処理をエッジコンピューティングで行う「Vieurekaプラットフォーム」を導入した小売店舗を報道向けに公開した。納入先はサツドラホールディングスが運営するドラッグストア「サッポロドラッグストアー」(以下サツドラ)で、札幌市内の1店舗にVieurekaカメラ96台を設置した。この他にも2店舗でカメラを試験的に導入している。
パナソニックは2019年9月11日、画像処理をエッジコンピューティングで行う「Vieurekaプラットフォーム」を導入した小売店舗を報道向けに公開した。納入先はサツドラホールディングスが運営するドラッグストア「サッポロドラッグストアー」(以下サツドラ)で、札幌市内の1店舗にVieurekaカメラ96台を設置した。この他にも2店舗でカメラを試験的に導入している。
Vieurekaプラットフォームは、カメラから映像をそのままクラウドに送るのではなく、ユーザー企業にとって意味のあるデータにカメラ側で処理する。処理されたデータをプラットフォームに集め、サツドラホールディングスは来店客の性別や年齢層の分析、どの棚の前を何人が通ったか、どの程度の時間で棚の前を歩いたか等店内での行動を検証している。これらのデータを基に、売れる売り場づくりや、業務の効率化を図る。店内のレイアウトや商品の陳列など店員の経験と勘で行う施策の効果を可視化し、POSデータやポイントカードだけでは分からなかった情報を蓄積する狙いがある。
ただ、「カメラ1台で月額1万円程度」(パナソニック ビジネスイノベーション本部 エッジコンピューティングPFプロジェクト CEOの宮崎秋弘氏)というVieurekaカメラのレンタル料を小売業が投資するのは難しい。サツドラホールディングスは、飲料や食品のメーカー、卸売業者など15社のパートナーを巻き込み、Vieurekaカメラ設置店舗を実証や仮説検証の場として提供する事でVieurekaプラットフォームの利用コストをカバーする。サツドラホールディングスは2018年10月からVieurekaカメラを利用しているが、期限を設けず長期間設置したい考えだ。
ゲーム機とソフトの関係
Vieurekaプラットフォームは、エッジデバイスであるカメラと、クラウドで構成されている。クラウドには、カメラ側で処理した結果を集め、マーケティングや看護、介護、企業での入退室の管理などに使う。また、クラウドから新しい画像処理アプリケーションを配信してカメラの機能をアップデートできる他、保守管理も遠隔から行うことができる。
このプラットフォームはパナソニックだけで開発するものではない。「パナソニックが担当する部分はテレビゲーム機で、さまざまなゲームソフトをパートナー企業が開発するイメージだ。パナソニックはカメラ本体とアプリケーション開発用のSDK、カメラやアプリケーションを管理するVieurekaマネージャーを提供する。パートナー企業は、SDKを使ってさまざまな業種に向けてアプリケーションを用意している」(宮崎氏)。パートナー企業は2019年9月に30社を超えた。
遠隔から保守管理やアップデートが可能なため、東京のVieurekaパートナー企業と、北海道が本拠地のサツドラとの連携が実現した。現場を訪問せずに完結する保守管理も多く、現場への駆け付けは90%削減できるという。Vieurekaパートナー企業は、付加価値を生むための作業に集中できる。
Vieurekaプラットフォームのアップデートは、サービスを開始した2017年以降、3年間で合計44回実施した。カメラ向けのアプリケーションは14回のアップデートが実行されたという。この更新はカメラで処理する対象を充実させたり、認識精度を向上したりするものだ。サツドラ向けに提供していた画像処理アプリケーションは当初、いつ、どんな年齢層や性別の人がどのくらい棚の前にいたかという来客分析だったが、2019年5月には棚の商品の欠品を検知する機能を追加した。また、小売り向けに、防犯カメラとしてのアプリケーションを開発するVieurekaパートナー企業もいる。
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