容体急変時の救命訓練が可能、テムザックが歯科向け小児患者型ロボットを開発:医療機器ニュース
テムザックは2020年10月8日、歯科治療を受ける子供の動きをリアルに再現する小児患者型ロボット「Pedia_Roid」を新開発した。治療を嫌がる子供への対処方法に加えて、急激な容体変化が発生した場合の救命方法も学べる。
テムザックは2020年10月8日、歯科治療を受ける子供の動きをリアルに再現する小児患者型ロボット「Pedia_Roid」を新開発したと発表した。ロボットを通じて、治療を嫌がる子供への対処方法や急激な容体変化が発生した際の救命方法などについて学べる。主に病院などを併設する教育機関を対象に販売する。
治療を嫌がる子供のばたつきを再現
Pedia_Roidは実際の治療現場で生じ得る、子供特有の動作や身体反応をリアルに再現する医療用ロボットだ。治療を嫌がる子供が手足をばたつかせる、泣き叫ぶ、首を振って暴れるなどの動きをロボットで表現する。この機能を搭載している点が、テムザックが販売中の歯科患者ロボット「DENTAROID」との大きな違いだ。ロボットを用いることで、子供を優しく押さえながら適切に歯科治療を行う手順を習得できる。
首や腕、脚などの稼働軸にはエアシリンダーを搭載している。このため、ロボットのボディーを上から押さえ付けても、モーターと違って内部で焼き切れる心配がない。皮膚はシリコン製。歯列模型はニッシンによるもので、実際に削るなどして虫歯治療の訓練も行える。削った歯は1本単位で取り換え可能。舌の奥にはセンサーが搭載されており、手を口の奥に入れ過ぎると嘔吐反射も生じる。
Pedia_Roidにはもう1つ特徴がある。治療中の子供に生じ得る、急激な容体変化を体感できる点だ。過去には、歯科麻酔などが原因となり子供が死亡する事故も実際に発生している。これを防ぐには、子供の様子を注意深く観察して、危険な兆候を示すシグナルを見逃さないようにしなければならない。Pedia_Roidは顔色の変化や手足のけいれんを再現し、急変時に起こる子供の異変をリアルに伝える。
顔面にはフルカラーLEDを搭載しており、頬の紅潮や蒼白化を演出する。胸部にはスピーカーを搭載しており、耳を当てると心音や呼吸音が確認できる。また、心臓マッサージの訓練にも対応する。
眼球部分には液晶ディスプレイを搭載しており、目の動きや瞳孔の反応も再現する。眼球の周囲には光に感応するセンサーが組み込まれており、ライトで光を当てると瞳孔が収縮するといった反応を示す。この他にも、麻酔の静脈注射や採血の訓練も可能だ。
Pedia_Roidは既に福岡歯科大学が先行導入しており、AHA(アメリカ心臓協会)の救命プログラム「PEARS(ペアーズ)」を参考にした小児患者急変シナリオに基づく救命措置訓練を学生に提供中だ。通常では体験できない緊急時の実習を行えるだけでなく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への感染対策としても有効であるという。
Pedia_Roidの将来展開について、テムザック 代表取締役の高本陽一氏は「ゆくゆくは歯科分野にとどまらず、気管挿管など各種医療教育にも使えるようシリーズ展開していく予定だ。国内だけでなく海外販売も視野に入れており、現在、欧州の安全規格審査に申請中だ。販売価格は未定だが、2000万円以下に抑えられるようにしたい」と語った。
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