新型コロナによる分断と偏りに翻弄される物流業界、デジタル化を進められるのか:サプライチェーン改革(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で大きな影響を受けた物流業界。これまでもデジタル化の後れを指摘されてきたが、COVID-19の終息後に向けた革新につなげられるような恒久的なデジタル化施策を進められるのだろうか。
輸配送業務は「想像以上にアナログのまま」
物流プロセスの中でも輸配送業務は「想像以上にアナログのまま」(石鍋氏)の状況にある。COVID-19で起きた分断と偏りは、デジタル化が進まず紙帳票などのアナログな手法に頼ったままで解消することは難しい。
日立製作所ではこの輸配送業務のデジタル化に向けて、テレマティクスを用いた「安全・運行・動態管理サービス」と、クラウドプラットフォームを用いた配送ルートの効率化や配送計画の自動化を可能にする「配送最適化サービス」を展開している。
安全・運行・動態管理サービスでは、配送トラックの位置データをリアルタイムに表示する「動態管理」や、地図上に走行軌跡を表示する「走行軌跡」、地域やドライバーごとに配送中に起きたイベント回数を集計する「運転集計」、ドライバー単位で配送先の進捗状況を表示する「進捗確認」などの機能がある。これらによって、現場の見える化を実現するとともに、熟練ドライバーの運転ノウハウの共有なども可能になる。
テレマティクス端末としては、スマートフォンと車載端末の2種類から選べる。運転情報は車載端末の方が精度で得られる一方で、スマートフォンは比較的短期間で導入できるとともにドライバーが車両から離れてもその位置情報を管理できるという特徴がある。日立製作所 エンタープライズソリューション事業部 流通システム本部 ロジスティクスイノベーション部 部長の長尾淳平氏は「車載端末は2018年から、スマートフォンは2019年から導入を開始しており、既にユーザーが利用しているサービスだ。実際に、車両事故件数が導入前と比べて30%削減するなどの成果も得られている」と強調する。
また、配送最適化サービスは、COVID-19によって急激に変わりつつある生活様式への対応や、足元の労働力不足の解決に役立つものだ。熟練者が担当してきた配送計画業務を自動化するだけでなく、より効率的な配送を可能にする「ドライバー帰り便の活用」にも適用できる。また、配送計画にドライバーの働き方を合わせるのではなく、ドライバーに合わせて配送計画を変更することなども可能になる。「配送計画業務にかかる時間が、人手から自動化に変えることで90%削減できた。その自動化で出した計画内容は、熟練者の計画と比べてトラック台数を10%削減できるというものだった。配送ルートの最適化による高速道路料金の削減なども実現できている」(長尾氏)という。
そして、これらの安全・運行・動態管理サービスや配送最適化サービスで扱うデータは、同じクラウドプラットフォーム上で管理することができる。つまり、安全・運行・動態管理サービスで見える化した配送車両やドライバーのデータを、配送最適化サービスに組み合わせて、さらなる効率化や自動化を容易に図れるというわけだ。石鍋氏は「これらのサービスを『Hitachi Digital Solutions for Logistics(HDSL)』としてつなげていき、サプライチェーン全体の最適化に向けたサービスを提供していきたい」と述べている。
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