富士通が初期費用100万円のローカル5Gクラウドサービス、小山工場で実証実験も:製造業IoT(2/2 ページ)
富士通が顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速するローカル5Gの事業戦略と新サービスについて説明。2020年5月に新設したローカル5Gの組織「5G Vertical Service室」を中心に展開を広げ、2025年度までの累計売上高で1000億円を目指す。
部門の枠を超えた「5G Vertical Service室」で対応
富士通は、ローカル5Gの事業展開について、ネットワーク事業の延長という位置付けではなく、あらゆる業種に向けて適用できるサービスとすべく、部門の枠を超えた活動が可能な専門部署を立ち上げた。それが5G Vertical Service室だ。
富士通 5G Vertical Service室長の後藤知範氏は「さまざまな顧客のDXを5Gで加速させるには、ネットワークインフラだけでなく、実世界にあるデバイスや端末、ネットワークを扱いやすくするためのサービスプラットフォーム、IoT(モノのインターネット)で収集したデータをAI(人工知能)で価値に変えること、そして顧客の持つ業種ナレッジとの掛け合わせによる価値創造などを含めたバーティカルサービスが重要になると考えている」と説明する。
今回の会見では、顧客のローカル5Gの課題解決に向けた施策として、「パートナー企業とのソリューション共創」と「プライベートワイヤレスサービスの提供開始」の2つを掲げた。
まず「パートナー企業とのソリューション共創」では「ローカル5Gパートナーシッププログラム」を開始する。通信系デバイス、プラットフォーム/アプリケーション、センサー系デバイスなどを展開する企業がパートナーとして加わり、富士通が提供するローカル5Gネットワークとの接続性を検証する「接続検証プログラム」と、パートナー企業と富士通の製品、サービス、先端技術を組み合わせて顧客へ提供するソリューションを共創する「ソリューション共創プログラム」から成る。
現時点でローカル5Gの検討で重要な実証環境としては、2020年3月に国内初となる商用ローカル5Gの無線局免許を取得し、運用を開始した「FUJITSU コラボレーションラボ」を用いる。富士通新川崎テクノロジースクエア(川崎市幸区)内にあり、「いち早く免許を取得して取り組みを進めてきたこともあり、ローカル5Gに関する最新の検証環境になっている」(後藤氏)という。
パートナー企業としては、エリクソンやインテル、クアルコム、キーサイトテクノロジーがテクノロジーパートナーに入り、マイクロソフト、キヤノンマーケティングジャパン、シャープ、村田機械などが接続検証やソリューション検証のパートナーとなっている。富士通の小山工場における日本マイクロソフトとの実証実験は、先行してFUJITSU コラボレーションラボ内で有効性を検証したシステムを導入することになる。
そして「プライベートワイヤレスサービスの提供開始」では、新たに「プライベートワイヤレスマネージドサービス」と「プライベートワイヤレスクラウドサービス」の提供を始める。
プライベートワイヤレスマネージドサービスでは、PoC(概念実証)から導入準備、設計・構築、運用・保守に至るまで富士通がワンストップでサービス提供を行う。一方、プライベートワイヤレスクラウドサービスでは、基地局やコアネットワーク、SIMなどの通信機能とその稼働状況の遠隔監視や障害発生時の一次対応などのサービス管理機能をクラウドサービスとして提供する。「ローカル5Gの導入検討では、高い初期費用がネックとなってスモールスタートできないことが課題になっている。これをクラウドサービスによって安価に抑えて、月額利用可能にすることで、ローカル5Gの導入による効果を体験しやすくする」(後藤氏)という。
なお、これらのプライベートワイヤレスサービスは、現時点では自営BWAシステム(いわゆるプライベートLTE)向けとして立ち上げるが、ローカル5G向けについては、2020年末に実施予定の新制度対応を含めて、プライベートワイヤレスマネージドサービスが2021年1〜3月、プライベートワイヤレスクラウドサービスが2021年4〜6月を予定している。
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