さまざまなLPWAの通信性能や干渉問題を検証する実証実験を開始:製造業IoT
東京大学IoTメディアラボラトリーは、横須賀リサーチパークと共同で、都市部におけるLPWAの実証実験を開始する。各LPWA方式の通信デバイスの比較評価を通じて、IoT事業者によるLPWAの選定を支援する。
東京大学IoTメディアラボラトリー(IoTメディアラボ)は2020年8月6日、横須賀リサーチパーク(YRP)と共同で、都市部におけるLPWA(Low Power Wide Area:低消費電力広域)ネットワーク(以下、LPWA)の実証実験を開始すると発表した。さまざまなLPWA方式の通信デバイスを使用した比較評価を通じて通信状況を把握し、IoT(モノのインターネット)事業者がニーズに合ったLPWAを選定できるように支援する。
低消費電力かつ長距離無線通信が可能なLPWAで使用する920MHz帯の電波は、免許不要のために現在多くの方式が存在しており、規格の選定を難しくしている。さらに今後、LPWAの利用やセンサー数の増加に伴い、同一LPWAだけでなく異なるLPWA間での干渉や混信が予想される。
IoTメディアラボでは、東京大学の本郷キャンパス工学部2号館内に「LPWA本郷テストベッド」を構築し、ビルが密集する都市部におけるLPWAの通信性能を検証できるようにした。すでにYRPは「横須賀ハイブリッドLPWAテストベッド」を構築しており、横須賀市街地でもLPWA通信実験を実施する。
各LPWA方式の通信デバイスを複数箇所に配置し、周辺の電波状況や送受信の可否、電波強度などをスペクトラムアナライザーや各種測定機器を用いて測定する。また、電波を発信する前のキャリアセンスの有効性、干渉や混信問題についても検証する。
対象とするLPWA規格は、LoRaWAN、Sigfox、ELTRES、ZETA、IEEE 802.11ah(Wi-Fi Halow)、Wi-SUNなどとしている。
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