自動車部品の生産が終わるのはいつ? 「打ち切り」までの道のり:いまさら聞けない自動車業界用語(4)(2/2 ページ)
今回解説する自動車業界用語は「量産品と補給品/打ち切り」です。基本的な用語ですが、区別を聞くと意外とすぐに答えられない、また補給品や打ち切りは実務で非常に問題の起きやすい所でもあります。この記事でぜひ定義、また現状を知っていただけたらと思います。
サプライヤーの悩みの種とは?
理由の1つ目は、供給年月が非常に長いことです。補給部品が打ち切りになることを「完全打ち切り/補給打ち切り/ディスコン」といいますが、通常は量産打ち切りから10〜15年は部品を供給する義務があります。この供給義務期間は完成車メーカーにより異なっており、一部のメーカーでは明確に定められていない場合もあります。また、一部の特殊車両については供給年月の期限はありません。
供給義務がある間、サプライヤーは補給品を作るための設備や金型を保管しておかなくてはいけません。自動車部品は品番点数も多いため、金型保管する場所が非常に多く必要になります。また補給品のためだけに設備を残しておかないといけない場合もあります。工場のスペースがなくなり、倉庫を借りるなど費用負担が発生しているサプライヤーは多数あり、大きな困りごとの1つになっています。
2つ目は数量が少ないことです。完成車に使用される量産品は数量も多く、比較的安定していますが、補給品のみになると数量は大幅に少なくなり、また数量のばらつきも大きくなります。「量産品の時は月に5000個ほど流れていた製品が、補給品になると月に5個のみ」、こういった場合が普通です。数量が少ない分、補給品の価格は量産品に比べて高く設定されていますが、実際にかかっているコストと見合っておらず採算がとれていない部品も非常に多いです。
3つ目は2次サプライヤー以降の供給年月が分かりづらいこと。ティア1といわれる1次サプライヤーは各完成車メーカーと直接やりとりがあるため、部品の供給年月の情報を直接つかむことができます。しかし、ティア2以降の2次、3次サプライヤーに関しては、どの完成車に使われていた部品なのか、いつ部品が量産打ち切りになったのかが不明なことが多いため、いつまで部品の供給義務があるのか分からないことが多々あります。完全打ち切りの案内があれば、設備や金型の廃却が可能になりますが、2次サプライヤー以降に対して発信されなかった結果、長期間の保管や無断で廃却したために部品が生産できず納期問題に発展することもあります。
こうした問題に対して、補給品の供給が必要な年月分の数量をまとめて作ってしまう「一括生産」の手段があります。ただどれだけの数量作る必要があるのか、長期間保管して品質に異常は発生しないのかなどの課題があり、行うことはたやすくありません。
補給品の供給義務が分からないために、数年ぶりに発注が来て在庫がなくて間に合わない、納期調整をするといったことも多く発生しています。完成車メーカーは供給が必要な部品のマスターを作成し、補給品の供給が途切れないようサプライヤーに依頼、納期順守率を管理しています。
中小企業保護の観点から国や経済産業省も補給品の供給問題を重要視しており、金型の保管および契約についてガイドラインを定め、サプライヤーの負担が軽くなるよう活動を進めています。ここ最近では、ティア1サプライヤーでティア2以降のサプライヤーの金型を引き取るといったケースも出てきています。
また、完成車メーカーでも、補給品の品番点数が少なくなるように類似の品番について統合化し、削減活動を実施しています。一部の部品に関しては金型や設備を必要としない3Dプリンタを活用した少量生産の活用も検討されています。サプライヤーを悩ませ続けてきた問題の多い補給品。問題の解決にむけ、完成車メーカー、サプライヤーが協力し合い、今後改善していくことが期待されています。
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