クラシックカー部品の超少量生産を3Dプリンタで、ポルシェが対象部品を拡大中:車両デザイン
ポルシェが、3Dプリンタによるクラシックカー向け部品の生産に力を入れている。クラッチリリースレバーなど9種類の部品を3Dプリンタで生産中だ。
ポルシェが、3Dプリンタによるクラシックカー向け部品の生産に力を入れている。3D CADツールや3Dスキャナーの3Dデータを用いて希少な部品を低コストに再現でき、少量の受注生産に効率よく対応しやすい点がクラシックカーに適しているためだ。
既に、クラッチリリースレバーなど9種類の部品を3Dプリンタで生産している。オリジナルの部品と同等以上の品質をクリアしており、走行試験などで耐久性も確認済みだ。現在、さらに20種類の部品を対象に3Dプリンタでの生産を検討している。
ポルシェのクラシックモデル部門であるポルシェクラシックが3Dプリンタの活用に取り組む。同部門では5万2000点の部品を扱い、在庫が減少するとオリジナルのツールで部品を複製していた。需要が多い部品は新しいツールを作成して生産するが、発注の少ない部品を同様の方法で生産するのは効率に課題があった。例えば「ポルシェ959」はトータルの生産台数が292台しかなく、今日の交換部品の需要の少なさは推して知るべしといったところだ。
ポルシェクラシックは、こうした超少量生産に対応するための手段として2種類の3Dプリンティング技術を使用する。クラッチリリースレバーなど金属製の部品はレーザー溶融法を採用した。不活性ガスの中でレーザー光を照射して粉末の工具鋼を溶融させて積層する手法だ。クラッチリリースレバーは、3トンの負荷をかけた圧力試験や、内部欠陥を調べる断層撮影法による検査をクリアした。
樹脂部品はレーザー焼結法で生産している。融点の直前まで材料を加熱し、レーザーで必要な箇所の粉末樹脂を溶解させる。3Dプリンタで生産した樹脂部品はオイルや燃料、酸など化学物質や耐候性も確保している。
3Dプリンタの活用によって生産や在庫管理のコストを低減するとともに、クラシックカーのユーザーに運転の楽しみを提供していく。
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