HPの“10倍速”3Dプリンタに新製品、価格は5万ドルからでフルカラー造形も:SOLIDWORKS World 2018
米国HPは、「SOLIDWORKS World 2018」において、同社の業務用3Dプリティングシステム「HP Jet Fusion」の新製品「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」を発表。価格は5万米ドルからと入手しやすくし、同社として初めてフルカラーでの造形が可能な品種を用意した。
米国HPは2018年2月5日(現地時間)、米国カリフォルニア州ロサンゼルスで開催中の「SOLIDWORKS World 2018」(会期:同年2月4日〜2月7日)において、同社の業務用3Dプリティングシステム「HP Jet Fusion」の新製品を発表した。量産製造を意識した数千万円レベルと高価な現行製品と比べて、造形の速度やサイズを抑えることで、価格は5万米ドルからと入手しやすくした。さらに、同社として初めてフルカラーでの造形が可能な品種を用意。中小規模の製造業や設計開発部門をはじめ、より多くの顧客への拡販を目指す。同日から受注を開始し、2018年後半に出荷を始める計画である。
新製品の名前は「HP Jet Fusion 300/500シリーズ」。造形色が白もしくは黒となる「HP Jet Fusion 340/540」と、フルカラー造形が可能な「HP Jet Fusion 380/580」があり、造形サイズはHP Jet Fusion 340/380が7.5×10.0×9.8インチ(190×254×248mm)、HP Jet Fusion 340/380が7.5×13.1×9.8インチ(190×332×248mm)となっている。
HP Jet Fusionは、一般的な樹脂3Dプリンタに用いられているFDM方式と比べて造形速度が“10倍速い”をうたい文句にしてきた。HP Jet Fusion 300/500シリーズは、現行製品の「HP Jet Fusion 3200/4200/4210」よりも造形速度は抑えられているものの「同価格帯の競合他社品と比べて数倍速い」(同社リリースより)としている。
また、ボクセル(Voxel)単位で3Dデータの取り扱い、オープンな材料開発プラットフォームの提供という特徴は現行製品と変わらないとする。その上で「量産に適用する技術を試作開発でも利用できるようになった」(HP 3Dプリンティング担当プレジデントのステファン・ナイグロ(Stephen Nigro)氏)という。
さらに、フルカラー造形が可能なHP Jet Fusion 380/580については、表面にビットマップイメージやQRコードなどを印刷した状態で造形することが可能だ。
現行製品のHP Jet Fusion 3200/4200/4210は、量産製造を意識していることもあり、造形を行う3Dプリンタ本体と、材料の準備や充填、リサイクルなどを行うプロセッシングステーションで構成されている。これに対して、HP Jet Fusion 300/500シリーズは、1つの筺体に全ての機能が集積されている。このため、競合他社の3Dプリンタと同様の設置のしやすさや、使い勝手の良さも実現できているとする。
ナイグロ氏は「HP Jet Fusion 300/500シリーズにより、3Dの設計と製造の民主化をさらに進めることが可能になる」と述べている。
関連記事
- “プリンタ界の巨人”の進撃始まる、閉じられた3Dプリンタビジネスに穴
日本HPは「第28回 設計・製造ソリューション展(DMS2017)」において同社の業務用3Dプリンティングシステム「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」の実機を展示。機能の詳細や使い方、造形サンプルなど紹介。米HP 3Dプリンティング担当プレジデントのステファン ナイグロ氏は「ライバルは射出成形」だと語る。 - いよいよ日本でも販売する“10倍速い”3Dプリンタ「HP Jet Fusion」、ボクセルで広がる可能性
従来の造形方式と比較して10倍速いという、米HPが独自開発した「HP Jet Fusion 3D」が日本でも販売される。ボクセル単位でのデータが扱えることによって、部品内部に細やかなカラー情報が仕込める他、センサーなども仕込めるようになるとしている。 - 10倍速い――米HPが新しい業務用3Dプリンティングシステムを発表
米HPは独自のサーマル・インクジェット式造形技術「HP Multi Jet Fusion」を採用した3Dプリンティングシステムを発表。高品質なモデルが高速かつ低コストで造形できるという。オープンプラットフォームの採用により、多様な素材やソフトウェアを提供する。 - DMM.makeでHPのJet Fusion 3D採用、稼働は2017年10月中
日本HPの「HP Jet Fusion 3D 4200プリンティングソリューション」が、DMM.comが運営するものづくりプラットフォーム「DMM.make」の3D出力ソリューションとして採用された。DMM.comでは、2017年10月中に稼働を開始する。 - 「NX」からHPの“10倍速”3Dプリンタへ直接出力、ボクセル単位設計も視野
シーメンスPLMソフトウェアは、同社の3D CADツール「NX」で設計したデータを変換することなく、HPの産業用3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」で直接出力するためのソフトウェアモジュール「NX AM for HP Multi Jet Fusion」を開発した。 - シーメンスが注力する積層造形ソリューション、「パートナーとの協力を重視」
シーメンスPLMソフトウェアが同社の積層造形ソリューションについて説明。自社で製造しているガスタービンの構成部品のリードタイムを約9分の1にするなどの成果が上がっている。しかし「実用化に向けてはパートナーとの協力が必須。スタートアップ企業のつもりで、着実に展開を広げていきたい」(同社)としている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.