「NX」からHPの“10倍速”3Dプリンタへ直接出力、ボクセル単位設計も視野:3Dプリンタニュース
シーメンスPLMソフトウェアは、同社の3D CADツール「NX」で設計したデータを変換することなく、HPの産業用3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」で直接出力するためのソフトウェアモジュール「NX AM for HP Multi Jet Fusion」を開発した。
シーメンスPLMソフトウェアは2017年9月6日(米国時間)、米国ボストンで開催中のプレス・アナリスト向けイベント「Siemens Industry Analyst Conference」において、同社の3D CADツール「NX」で設計したデータを変換することなく、HPの産業用3Dプリンタ「HP Multi Jet Fusion」で直接出力するためのソフトウェアモジュール「NX AM for HP Multi Jet Fusion」を開発したと発表した。
シーメンスグループは、製品の設計や生産プロセスにおける「デジタルツイン」を実現していく上で、3Dプリンタとしても知られている積層造形(AM:Additive Manufacturing)技術の開発やエコシステムの構築に注力している。従来のFDM(熱溶解積層)方式やSLS(粉末焼結造形)方式と比べて“10倍速い”とする「Multi Jet Fusion」を展開するHPは、シーメンスグループのAM技術のパートナーとして協調関係にある(関連記事:シーメンスが注力する積層造形ソリューション、「パートナーとの協力を重視」)。
NXは、3Dプリンタによる直接出力を可能にするソフトウェアモジュール「NX AM」を直近12カ月で8種類展開しているが、NX AM for HP Multi Jet Fusionはその最新版となる。これによりサードパーティーソフトなどを用いたデータ変換作業が不要になる他、さまざまな部品を入れ子にして一度に3Dプリントする「3Dネスティング」の自動化も可能になる。将来的には、ボクセル(Voxel)単位で材料特性を変更していく複雑な3Dプリントへの対応も視野に入れている。
部品セットを入れ子にして3層重ねて3Dプリント
同イベントにおける同年9月7日の講演には、シーメンスPLMソフトウェアのAM技術担当者とともに、HPのglobal head of 3D Printing Commercial Expansion and Developmentのミシェル・ボックマン(Michelle Bockman)氏が登壇した。ボックマン氏は「AM技術を生産に適用していく上で、3D CADからのデータ変換作業は課題になっていた。これを自動化するNX AM for HP Multi Jet Fusionは極めて有用だ」と語る。
また、3Dネスティングの機能向上についても言及し「従来は、ある80個の部品セットを2層重ねて3Dプリントしていたが、現在は3層重ねて3Dプリントできるようになった。これにより生産性が25%向上し、部品1個当たりの生産コストも16%削減できている」(同氏)という。
また、開発を進めているボクセル単位での3Dプリントの応用として、カラー出力部分を摩耗検知に用いる事例を挙げた。
関連記事
- デジタルツインを全てカバーするシーメンス、投資額は10年間で1兆円超に
シーメンスPLMソフトウェアのプレス・アナリスト向けイベント「Siemens Industry Analyst Conference」の基調講演に、シーメンスのデジタルファクトリー部門のCEOを務めるヤン・ムロジク氏が登壇。ムロジク氏は「デジタライゼーション(デジタル化)」と「デジタルツイン」の重要性を強調した。 - シーメンスが注力する積層造形ソリューション、「パートナーとの協力を重視」
シーメンスPLMソフトウェアが同社の積層造形ソリューションについて説明。自社で製造しているガスタービンの構成部品のリードタイムを約9分の1にするなどの成果が上がっている。しかし「実用化に向けてはパートナーとの協力が必須。スタートアップ企業のつもりで、着実に展開を広げていきたい」(同社)としている。 - いよいよ日本でも販売する“10倍速い”3Dプリンタ「HP Jet Fusion」、ボクセルで広がる可能性
従来の造形方式と比較して10倍速いという、米HPが独自開発した「HP Jet Fusion 3D」が日本でも販売される。ボクセル単位でのデータが扱えることによって、部品内部に細やかなカラー情報が仕込める他、センサーなども仕込めるようになるとしている。 - 「デジタイゼーションではなくデジタライゼーションが重要」――シーメンス
シーメンスは同社の事業戦略とデジタライゼーションへの取り組みや有効性について、FMC、キャロウェイ、デルの例を挙げて説明した。 - 複雑な情報を保持する3Dプリント用データフォーマットの仕様を公開
富士ゼロックスと慶應義塾大学SFC研究所は、物質の内部構造/色/材料/接合強度などまでを含めた3次元の複雑な情報を保持する3Dプリント用データフォーマット「FAV」を共同で研究し、仕様を公開した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.