いよいよ日本でも販売する“10倍速い”3Dプリンタ「HP Jet Fusion」、ボクセルで広がる可能性:3Dプリンタニュース
従来の造形方式と比較して10倍速いという、米HPが独自開発した「HP Jet Fusion 3D」が日本でも販売される。ボクセル単位でのデータが扱えることによって、部品内部に細やかなカラー情報が仕込める他、センサーなども仕込めるようになるとしている。
日本HPは2017年6月20日、同社の業務用3Dプリティングシステム「HP Jet Fusion 3Dプリンティングソリューション」(以下、HP Jet Fusion 3D)を販売開始すると発表した。同システムは3Dプリンタ本体「HP Jet Fusion 3D 3200」もしくは「HP Jet Fusion 3D 4200 Printer」、材料の充填、パーツの冷却、取り出しのためのシステム「HP Jet Fusion 3Dプロセッシングステーション」で構成する。
HP Jet Fusion 3D 3200は主に試作向けとし、HP Jet Fusion 3D 4200はさらに小ロットの最終製品の製作にも耐えうる性能だとしている。
「HP Jet Fusion 3D 4200 プリンティングソリューション」の価格は約3800万円から(保守、サービス、据付調整費、消耗品などは含まれない)、同年8月からの販売を予定する。「HP Jet Fusion 3D 3200 プリンティングソリューション」については、価格は未発表で、同年11月からの販売を計画している。国内販売は、武藤工業やリコージャパンと協業して販売およびサポートを展開する。
HP Jet Fusion 3Dはボクセル(Voxel)単位で3Dデータを扱えることが特長。現在は黒やグレーなどの単色のみだが、将来は、ボクセル単位でカラーやテクスチャーの他、センサー類などの部品を仕込んだりしながら造形できるとしている。ファイルフォーマットはSTLと併せ、シーメンスらと開発した3MFをサポートする。3MFはポリゴンモデルにカラー情報が付加できる。
今後の同システム活用の可能性について米HP 3Dプリンティング担当プレジデント ステファン ナイグロ氏は「例えば、実験で重量を徐々に掛けるクサリの中にひずみセンサーを仕込み、そこからデータを収集し、くさりが徐々にひずむ様子を可視化するといったIoT(モノのインターネット)的な活用が可能になる。また、内部にカラーの層を仕込んでおけば、部品が摩耗していくと、注意したいレベルまで削げると黄、警告すべき状態までくればと赤が露出するといった部品が製作できる」と語る。
同システムが採用する「HPサーマルインクジェットテクノロジー」は同社独自の造形技術であり、過去30年に渡る2Dプリンティングでの経験を生かしたもの。約30×40cmの造形エリア全体を使って、パウダー材料を積層、そこに2種類のエージェント(溶解促進剤)を噴射し、ヒーターによる加熱を繰り返して硬化させることで造形していく。従来技術のように1点1点を噴射して造形していくような方式と比較して最大10倍の造形スピードで、高品質なパーツが製作可能だという。造形材料はナイロン12ベースで、高強度な熱可塑性樹脂「HP 3D High Reusability PA 12」がある。
材料費についても今後もどんどんコストダウンしていくとして、「Open Material platform」という材料開発におけるオープンな場を提供し、材料メーカーなども巻き込みながら材料開発していく。「大幅に材料コストを落とすことでパーツ単価を落とし、3Dプリントの需要を拡大していく方針だ。今後はさまざまな樹脂系材料を増やしていく他、金属造形についても研究中である」(ナイグロ氏)。
同システムの戦略パートナーとして、BMWグループ、ナイキ、Jabil、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどを挙げ、幅広い業界において試作から最終製品生産まで含めた3Dプリンティングシステムを開発しているという。
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