産業用ロボットが3Dプリンタに、オートデスクがデモを披露:Autodesk University 2016
Autodesk(オートデスク)は、ユーザーイベント「Autodesk University 2016」の展示会場で、さまざまな3Dプリンタ技術を披露した。ひときわ目を引いたのが、多軸の産業用ロボットアームを用いたデモンストレーションだろう。
Autodesk(オートデスク)は、ユーザーイベント「Autodesk University 2016」(2016年11月15〜17日、米国ネバダ州ラスベガス)の展示会場で、さまざまな3Dプリンタ技術を披露した。
同社のコーポレートスローガン「Future of Making Things」をテーマとする展示ブースでひときわ目を引いたのが、多軸の産業用ロボットアームを用いた2種類の3Dプリンタ技術のデモンストレーションだろう。展示は「3Dプリンタ」ではなく「付加製造(Additive Manufactuaring)」と表記されており、製造分野への展開を強く意識していることがうかがえる。
1つは、産業用ロボットアームの先端からFDM方式で樹脂を積層していく技術である。一般的なFDM方式の3Dプリンタは垂直方向に樹脂を積層する。しかしこの展示では、産業用ロボットアームによって樹脂を吐出するヘッドを自由な角度に制御できるので、従来のFDM方式の3Dプリンタではできない形状の出力が可能だ。より大型サイズでの出力も行えるという。
もう1つは、産業用ロボットアームの先端に装着した溶接装置とスキャナーを用いた、高精度のアーク溶接方式積層造形である。金属3Dプリンタ技術のうち、アーク溶接方式は低コストで済む半面、精度が低いという課題がある。この展示では、アーク溶接による積層造形を1層分行うごとに、スキャナーで積層表面の状態を撮影/分析。次の積層造形をより高精度に行えるように補正していくという内容になっていた。
オートデスクは、Autodesk University 2016に合わせて、3Dプリント用データの編集/修正ソフトウェア「Netfabb」の新機能を発表している。買収したPan Computingの金属積層造形のシミュレーション技術や、積層造形の表面仕上げなどに用いる切削研磨への対応、そして複数のヘッドを使ってシームレスに1つのモノを積層造形で出力する「コラボレーション3Dプリント」などだ。
これらの新機能のうちコラボレーション3Dプリントに用いられている「Project Escher」の成果に関する展示も行われていた。5つのヘッドによって積層造形した、かなり大きなABBの産業用ロボットアームの出力結果や、市販のデュアルヘッドの3Dプリンタを改造してProject Escherの成果を適用し、シームレスな出力が行える動展示などである。
これらの展示は、オートデスクが開発中のソフトウェア技術が、さまざまな形で3Dプリンタに応用できることを示すためのものだ。同社はオープンソースの3Dプリンタソフトウェア基盤「Spark」を展開しており、Hewlett Packard Enterprise(HPE)はSparkの技術を応用した3Dプリンタを商品化した。展示会場では、406×305×406mmサイズで出力できる3Dプリンタ「HP Jet Fusion 3D 4200 Printer」をHPEが展示しており、米国内では既に量産販売されている。
これと同じ形でオートデスクのソフトウェア技術が3Dプリンタに採用されていけば、同社が得意とする設計プロセスだけでなく、製造プロセスにも関わりを広げられる。オートデスクの今後の事業展開において、これらの3Dプリンタ技術は重要な役割を果たしていきそうだ。
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