ホンダの抗ウイルス・アレル物質シートがオフィス家具に、内田洋行が採用:材料技術
内田洋行は2020年7月30日、ホンダの軽自動車「N-BOX」「N-WGN」に使用している抗ウイルス・抗アレル物質のシート表皮「アレルクリーンプラス」を採用したオフィスチェアを発売したと発表した。ホンダが特許技術であるアレルクリーンプラスを提案し、内田洋行の製品での採用に至った。
内田洋行は2020年7月30日、ホンダの軽自動車「N-BOX」「N-WGN」に使用している抗ウイルス・抗アレル物質のシート表皮「アレルクリーンプラス」を採用したオフィスチェアを発売したと発表した。
ホンダが特許技術であるアレルクリーンプラスを提案し、内田洋行の製品での採用に至った。自動車向けならではの耐摩耗性や耐久性といった性能も評価された。アレルクリーンプラスを採用したオフィスチェアは通常モデルと比べて2割ほど価格がアップする。
写真左から内田洋行の門元英憲氏、ホンダ 四輪事業本部 ものづくりセンター アレルクリーンプラス開発責任者の林里恵氏、ホンダ 知的財産・標準化統括部 アレルクリーンプラス商品化担当の森隆将氏(クリックして拡大)
ホンダではこれまでにも、知的財産活用の一環で画像認識技術や異種金属の接合技術の提案に取り組んできた。画像認識技術では、スワローインキュベートに歩行者認識技術の特許技術や研究成果をライセンス供与。スワローインキュベートは、人物検出技術を開発し、自動車以外の領域向けにWebアプリやWeb APIとして提供している。アルミニウム合金とスチールを連続接合する摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding、FSW)は、設備メーカーを通じて自動車業界にも提案を進めている。
アレルクリーンプラスとは
アレルクリーンプラスは、表面に付着したインフルエンザA型ウイルスやダニ、スギ花粉を不活性化する加工が施されている。これをオフィス家具に応用することで、働く人のインフルエンザや花粉症への対策を助ける。また、フリーアドレス制や会議などで不特定多数の人が椅子を使用する中で安心して過ごせる環境に貢献する。現時点では新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への効果を検証する試験方法が確立されておらず有効性は確認できていないが、手法が確立され次第、検証したい考えだ。
これまで、ダニやスギ花粉を不活性化する加工はホンダだけでなく他の自動車メーカーも採用してきたが、ダニが活発な時期や花粉症の期間が限られるため、付加価値として打ち出しにくいのが課題だった。ホンダはインフルエンザA型ウイルスの不活性化にも対応させ、年間を通じたメリットをユーザーに訴求しやすくした。内田洋行としても、オフィス家具の付加価値になると判断し、採用を決めた。抗ウイルスや抗アレル物質の効果だけでなく、量産の実績や特許技術であることも採用の決め手となった。
アレルクリーンプラスでは、抗アレルゲン材でダニアレルゲンに効果のある高分子タイプの芳香族ヒドロキシ、スギ花粉アレルゲンに効果のあるリン酸ジルコニウム、インフルエンザウイルスに効果のある抗ウイルス材として低分子タイプの芳香族ヒドロキシを使用している。この3種類の薬剤とバインダー樹脂に表皮材を浸すことで、効果を持たせる。さまざまな薬剤やバインダーの組み合わせの中から、200回以上の試作を経て完成した。ホンダでは水分だけでなく油分もはじくシート表皮を展開しており、自動車用シートの技術を不特定多数が利用する場所の椅子や、洗濯や洗浄が難しい家具の素材への応用を計画している。
オフィスへの投資動向について、内田洋行 オフィス商品企画部 部長の門元英憲氏は「コロナ禍を受けてオフィスを手放すケースが増えているという報道があるが、そういった形で急いで固定費を削減したい会社は全体で見るとごくわずかな割合だ。働き方の変化が急速に進んでいるのは事実で、変化に対応するためのオフィス投資は引き続き見込める」と語った。
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