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工場設備の立ち上げ期間を30〜40%削減、モノづくりDXの価値を訴えるシーメンススマートファクトリー(2/2 ページ)

シーメンスは2020年7月21日、同社のDX(デジタル変革)に関する戦略についてオンラインで記者発表会を開催。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による、デジタル技術を生かしたモノづくりの「ニューノーマル(新常態)」などの他、これらのデジタル技術を活用した平田機工の事例、同社のデジタル基盤の1つとなる産業用OS「MindSphere」の動向などについて説明した。

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設計から設備立ち上げまでプロジェクト全体のリードタイムを約30%削減

 平田機工は自動車産業向けをはじめとする各種生産システムや製造装置の提供を行う企業である。しかし、消費者ニーズが多様化する中、自動車メーカーをはじめとする納入先の開発期間が短かくなり、それに伴い、装置メーカーにとっても装置立ち上げ期間の短縮などが要求されるようになっている。そのためには、装置のレイアウトの最適化や要求タクトタイムの早期の確立などが必要になり、従来のようにハードウェアをすり合わせ、現地で追い込むだけでは実現が難しい状況になっていた。こうした課題に対応するためにはできる限り前工程をデジタル環境上で行い、シミュレーションなどを活用することが必要となる。これらのデジタル技術を提供したのがシーメンスである。

 シーメンスでは、PLCなどのオートメーションプログラムにセルやラインのシミュレーションを行うプロセスシミュレーション技術、エレクトロニクスや動作モデルなどのシミュレーション技術、工場全体の情報を統合してシミュレーションするプラントシミュレーション技術などを提供。これらを組み合わせることで、仮想的に工場設備や生産システムのバーチャルマシンモデルを構築。このモデルをベースにバーチャル空間上でさまざまな試行錯誤を進めることで、実際に現場ですり合わせる作業をできる限り仮想空間上で実現し、実際の納入期間の短縮につなげることができたという。

 結果として、従来プロセスにおいて現場での手直しや立ち上げ調整の期間を大幅に削減することに成功。設計から製造、立ち上げ調整までの全プロジェクト期間においても30〜40%の短縮化を実現した。シーメンス デジタルインダストリーズ 広域営業部 部長の濱地康成氏は「開発期間の短縮はもちろんだが、デジタル技術を業務プロセスに入れて新たな仕事のやり方に取り組むイノベーション文化を醸成する意味でも効果があったと聞いている」と語っている。

 シーメンスでは平田機工との取り組みや、その他の2社での実証試験などの実績も含め、新たにこれらのデジタル技術やオートメーション技術を提供するだけではなく、コンサルティングサービスなども新たに開始する計画だ。「DXはジャーニーともいわれるような長い変革が必要になる。技術だけではその実現は難しく、地図とコンパスが必要になる。シーメンスではこれらの領域にも踏み込みグローバルでコンサルティングサービスを立ち上げ、日本でも開始する。コンサルテーションだけでなく実装まで行える点が強みだ」と濱地氏は訴えた。

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シーメンスのデジタル化コンサルティングサービスの範囲(クリックで拡大)出典:シーメンス

マインドスフィアは新たにAlibaba Cloudに対応

 デジタル化を進める中で、複数の工場や地域を越えて情報を結んでいくためにはクラウド基盤は欠かせないが、シーメンスではクラウドベースの“IoTオペレーションシステム”「MindSphere(マインドスフィア)」を展開する。マインドスフィアはPaaS(Platform as a Services)で、IaaS(Infrastructure as a Service)には主要クラウドベンダーのクラウドプラットフォームを活用しているが、対応済みであったAWSおよびMicrosoft Asureに加え、Alibaba Cloudにも対応した。

 シーメンス デジタルインダストリーズソフトウェア パートナーディベロップメントエクゼクティブの松本洋一氏は「数多くの工場が立地する中国でもマインドスフィアを活用して一元的に情報やアプリを使うことができるようになった」と価値を強調した。

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マインドスフィアの構成(クリックで拡大)出典:シーメンス

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