銅コーティング速度を6倍に、青色半導体レーザー複合加工機を共同開発:FAニュース
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、従来比6倍の速さで銅コーティングができる青色半導体レーザー複合加工機を共同開発した。200Wレーザーを3台装着した600W級マルチビーム加工ヘッドを搭載している。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2020年7月1日、大阪大学、ヤマザキマザック、島津製作所と共同で、従来比6倍の速さで銅をコーティングができる600W級青色半導体レーザー複合加工機を開発したと発表した。2020年末には10倍以上のコーティング速度を可能とするkW級を開発し、2021年の製品化を目指す。
新開発の加工機は、200W高輝度青色半導体レーザーを3台装着した600W級マルチビーム加工ヘッドを搭載。レーザーの高輝度化と集光スポットのパワー密度を6倍に高めることで、金属材料への銅コーティング速度を従来比で6倍向上し、またこれまで困難だった多層コーティングも可能になった。
金属に対する吸収効率が高い青色半導体レーザーの高輝度化によって、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料への銅の高速度コーティングが可能になった。また、加工ヘッドを1回走査することで得られるコーティング領域の幅の最大値は、従来の400μm程度から1000μm程度まで増大できることも分かった。
さらに、噴射される銅粉末材料を直接加熱することで母材表面の溶融を抑えられ、母材金属の混入やゆがみの少ない精密なコーティングができる。加工ヘッドは同時に5軸制御ができ、複雑な形状の部品にも対応可能だ。
大阪大学とヤマザキマザックは石川県工業試験場および大阪富士工業と連携し、同機によるドアノブへの銅の高速、精密レーザーコーティングを開始。殺菌、抗菌、ウイルス不活化作用のある銅のコーティングにより、細菌やウイルスの感染リスクを低減するといった公衆衛生環境への貢献や、航空、宇宙、電気自動車などの分野で必要な高精度な部品への活用が期待できる。
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