改革の一手は「R&D機能を持つ情シス」、エレベーターのDX推進に必要なこと:製造業IoT
ソラコムは2020年7月14日、年次ユーザーイベント「SORACOM Discovery 2020」をオンラインで開催した。イベントセッションに登壇したフジテック 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長の友岡賢二氏は、ソラコムのIoTサービスやGoogle Mapsを活用したDXの取り組みや、またIoTを活用したDXを円滑に推進するために行った情報システム部の組織改編などを語った。
ソラコムは2020年7月14日、年次ユーザーイベント「SORACOM Discovery 2020」をオンラインで開催した。当日は、ソラコムのIoT(モノのインターネット)サービスなどを用いてデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む製造業の事例紹介を行うセッションなども開催された。その中から本稿では、フジテック 常務執行役員 デジタルイノベーション本部長の友岡賢二氏による講演を抜粋してお届けする。
グローバル遠隔監視システム構築にソラコムのサービスを活用
友岡氏は製造業によるDXの中で、特に重視すべき取り組みの1つとして「デジタルツインの推進」を取り上げる。「まずは自社内で稼働している機器やプロセスを見える化して、それらの情報を基にソフトウェア上でシミュレーションを実行、その後、バーチャルの結果をリアルの世界に落とし込む最適化プロセスを実施する。この一連の流れをサイクルとして反復することがDXの根幹といえるだろう」(友岡氏)。
こうした考えに基づいて、友岡氏はフジテック入社時より「All on Maps」というプロジェクトを掲げてその実現に取り組んでいる。同プロジェクトは、フジテックが管理するエレベーターの稼働情報の他、エレベーターから取得したログやフィールドエンジニアの位置情報などを全て統合し、Google MapsのAPIを活用して、単一のマップ上に可視化するというものだ。これによってエレベーターの遠隔監視を実現するとともに、収集した膨大なデータをAI(人工知能)で処理することで「エレベーターのメンテナンス時に、どのフィールドエンジニアを派遣するべきかを判断して、エンジニアの出向手配や連絡などの作業効率化を促す」(友岡氏)という。
このシステムをグローバル展開するために、フジテックはソラコムやAWSなどのサービスを採用した。「各エレベーターに搭載したグローバル対応の『SORACOM IoT SIM』で取得したエレベーターログを、ソラコムのVPG(仮想プライベートゲートウェイ:Virtual Private Gateway)を通じてAWSのクラウド上に構築したフジテックのVPC(仮想プライベートクラウド:Virtual Private Cloud)に送信する。これらのデータに当社の各拠点からアクセスできるようなシステム構成にした」(友岡氏)。
情報システム部にR&D機能
しかし、このようにIoTデバイスを活用したDXを推進する上で、友岡氏はある課題に直面したという。R&D部門の担当範囲が、従来より拡大してしまうという問題だ。
「これまでのR&Dは、プロジェクトごとにチームを組織して、新製品を開発したら解散するというプロジェクトベースの案件が大半だった。しかしIoTデバイスを組み入れた製品/システムの開発となるとこうはいかない。開発後の継続的な情報収集やメンテナンス、サービスの運用まで開発者の視点が必要になるからだ。しかし当時、当社にはR&Dと製品販売後のアフターフォローをブリッジするような、組織横断的視点を持つ人材や部署がなかった」(友岡氏)。
そこで友岡氏が考案したのが、既存の情報システム部を組織改編して、同部内にR&D機能を持つ部署を設立するという策だった。当時、情報システム部の部長を務めていた友岡氏が、同部を「デジタルイノベーション本部」に改称してR&Dの機能を持つ「テクノロジー研究部」をその下部に新設した。また開発後の製品/システムの効果を計測する「プロセス管理部」なども新設することで、開発した製品/システムの運用を長期的にサポートする体制を構築したという。
講演の最後に友岡氏は「昭和時代の製造業は『現場、現物、現実』や『まずはやってみなはれ精神』が尊ばれていた。しかし、現代の製造業では、ユーザー視点を重視するデザイン思考の取り入れやデータ分析を通じた製品開発などのグロースハックなどが求められている。これらの取り組みで現場を改革していくDXこそが必要になるだろう」と語った。
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IoTのおかげでいい感じに育ってると思います。