CFRP製造技術でカスタム自転車に参入、航空宇宙・自動車向けはAGCなどと展開:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
シリコンバレーのベンチャー企業であるArevoは、独自のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)素材の設計・製造技術を活用し、新たにカーボンフレームのカスタム自転車ビジネスへの参入を発表した。また、AGCなどのパートナーと協力し、航空宇宙向けや自動車向けのCFRP活用拡大に向けた取り組みを強化する。
カスタム自転車メーカーを設立し独自展開
これらのパートナーとの展開に加え、Arevoが新たに取り組むのが、カーボンフレームのカスタム自転車の展開である。新たに専門メーカー「Superstrata」を設立し、自らの技術を使うことで、3Dプリントによりカスタムメイドをしたユニボディ・カーボンファイバー製スポーツバイクを従来よりも低価格で展開できるようにする。2020年7月14日からIndiegogoでクラウドファンディングを開始し、成否にかかわらず2020年12月から順次製品を出荷する。
Arevo 日本ゼネラルマネージャーの田中大祐氏は「Arevoの技術力がまだ知られていない中で、1つ身近なものを作り、実際に提供できる力があることを示したいと考えた」と語っている。2020年3月にプロジェクトを開始し、プロレーサーの監修なども受けながら約4カ月で形にしたことになる。田中氏は「Arevoの持つスピード感を体現できた」と語る。
自転車を選んだ理由について、田中氏は「カーボンファイバー製のスポーツバイクはカスタムが難しいからという理由がある」と述べる。カーボンファイバー製のスポーツバイクは既製品では既にある程度の低価格で購入できるようになっているが、CFRPの加工が難しく、カスタムメイドとなると50〜200万円と、価格が大きく跳ね上がる状況があった。加えて、従来のカーボン素材はZ軸強度が弱く負荷がかかりすぎると割れるという安全性の問題もあった。「Arevoの技術力を用いることでこれらの課題を解決できると考えた」と田中氏は語っている。
3Dプリント技術によりフレーム部分を溶接やボルトを用いずに単一パーツで実現した他、内部を空洞化し電動アシスト機構などを内部に収納することが可能。身体の数カ所を計測し、体のサイズだけでなく、ライディングスタイルなども含めてカスタマイズが可能だとしている。フレーム部分の重量は電動アシストなしの場合は1.3kgで、カーボン素材の特性を生かした軽量化を実現できる。
また、フレームだけでなく駆動パーツやタイヤ、ホイールなど、50万通り以上のカスタマイズが可能だとしている。価格は、電動アシスト機能なしの「Superstrata Terra」が2799ドル〜(約30万円〜)で、電動アシスト機能付きの「Superstrata Ion」が3999ドル〜(約43万円〜)と低価格を実現した。
今後は「Superstrataを通じ、技術力を訴えてCFRPの利用を広げていく。協業なども積極的に行い、さまざまな用途で幅広く使えるようにしていきたい」と田中氏は語っている。
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