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モノづくりの中核「生産」を革新する製造オペレーションと4つのデジタルスレッド製造業にダイナミズムをもたらすデジタル変革(3)(4/4 ページ)

デジタル化がどのように製造業の企業活動の変革を導くのかを解説する本連載。第3回は、製造業の業務の中でもモノづくりの中核となる生産領域の業務革新について取り上げる。

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インテリジェントな設備保守

 生産設備について、日々の保守の実施や評価までを統合的に管理するには、さまざまなデジタル技術を組み合わせることによる、生産工程の自動化やインテリジェント化が有効です。これによって保守業務の効果を最大化し、ライフサイクルを通じた設備の信頼性とコスト削減の両立を実現できます。

 例えば、世界中で稼働している生産設備に対しセンサーを設置してナノ秒単位でデータを収集し、個々の製品や業務の特性を考慮して、分析プラットフォーム上で潜在的な不具合を早期検知アルゴリズムを使って分析します。その結果として、大幅に保守のコストを削減するとともにダウンタイムも低減できます。

 また、AIを外観検査に活用することもできます。人間による目視検査では見落としが発生しますし、各検査工程に作業員を配置するため工数を削減することが困難でした。しかし、機械学習によってOK/NG画像データを登録するだけで組立不良を自動検出することができます。ヒューマンエラーや検査コスト、検査作業員のトレーニング時間などの削減も可能です(図7

図7
図7 AIによる外観検査事例(クリックで拡大 出典:アクセンチュア

 さらに、AR(拡張現実)を作業員のトレーニングに活用することが可能です。従来は2カ月程度必要だった教育期間を短縮するとともに、熟練工に依存しがちだった工程作業を、スマートグラスを活用したAR技術と画像解析の組み合わせにより、初心者でも熟練工に引けを取らずに行うことが可能になります。

終わりに

 全3回の連載を通じて、デジタル技術による革新的な製品やサービスの創出、それに対応するための生産領域を含めた業務革新までを紹介しました。製造業におけるデジタルの活用は、欧米はもとより中国やインドと比べても日本は遅れています。日本は今まで人間の努力でそのギャップを埋めてきましたが、いよいよ働き方改革が本格化する中で、デジタルを活用した業務革新が喫緊の課題になっています。製造業に関わる読者の皆さまも、ぜひ今回の連載で紹介した内容を参考に、デジタル活用に取り組んでいただければ幸いです。連載中お付き合いいただきありがとうございました。(連載完)

筆者プロフィール

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志田 穣(しだ みのる) アクセンチュア株式会社 ビジネスコンサルティング本部 インダストリーX.0 エンジニアリング領域リード

設計開発領域を核として、複数の製造業デジタルトランスフォーメーションプロジェクトを統括。アクセンチュア入社前は、原価管理ソリューション、開発における法規文書管理など多岐にわたるPLMプロジェクトを推進。また、産業IoT事業開発企画等のコンサルティング、自動車を中心とした組立系製造業にCAD/PLMツールの導入や、それをてこにした設計開発業務のプロセス改革に従事した経験がある。

アクセンチュア株式会社https://www.accenture.com/jp-ja

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