コンパクトブレーカ販売20周年、成長続くパナソニックの電路事業のモノづくり:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
新築住宅着工件数が減少傾向にあり、国内の住宅設備関連市場は厳しい状況が続いている。そうした中でパナソニックの住宅盤、電設盤、ブレーカなどの電路事業は、直近10年間でシェアを10%伸ばし、市場の半分を占めるまでに拡大した。2019年度に約450億円を記録した販売額を2030年度には1.8倍の800億円前後に引き上げる方針だ。
小型化ニーズに応えた分電盤をいち早く開発
住宅分電盤は家庭の電気回路において短絡、過電流、漏電、中性線欠相などの異常事故から電線を保護する安全装置だが、直近では家庭内電気機器の増加に伴う回路数の増加(大型化)により、設置場所のスペースが限られるなどの住宅メーカーの要望により、小型化のニーズが高まっている。同社ではそのニーズに対応し、2000年に「コンパクト21」を開発した。
2020年はこのコンパクトブレーカ販売開始20周年にあり、それを記念した「ありがとうキャンペーン」を実施中だ。また、分電盤の取替推奨時期13年を迎えた分電盤の注意・取り換えの喚起、さらに防災・防犯・防疫など不測の事態に対する備えの重要性を訴える活動も行っている。これに加えて、コロナ禍での新しい生活様式として社会から求められとされる非接触やソーシャルディスタンスに役立つ、人感センサーを用いた非接触型のスイッチ「かってにスイッチ」などの製品群の販売にも力を注ぐ。
コンパクト化とともに、電源側プラグイン端子、負荷側速結端子を採採用するなどねじレス化による安全性・施工性の向上にも取り組んだ。さらに震度5強以上の強い揺れを感知した場合に、自動的にブレーカを落とすことで火災事故を防ぐ「感震ブレーカ」を、2014年にはHEMS対応した住宅分電盤「スマートコスモ」を開発し、さらなる電気の安全と便利さを創造してきた。このように市場にフレキシブルに対応した製品作りが、同社の強みだが、今後についても「住宅盤の高付加価値化を図り、市場のトレンドをつかみ取った製品展開を続けていく」(パナソニックスイッチギアシステムズ 取締役の進広和氏)方針だ。
モノづくりの強化も継続、COVID-19対策も
製造面での特徴としては、コンパクトブレーカ(全ての分電盤に搭載している分岐ブレーカ、月産70〜80万個)を例にみると、自動化一貫ラインにより、生産効率を高めるとともに「ワンフロアで完結できることから品質問題にもすぐに対応できる備えが整っている」(矢尾氏)としている。
さらに、需要連動生産を採用し、一時的に全ての製品を在庫し、そこから顧客の受注に対応して、出荷により減少した在庫品を補うための生産を行う(後補充生産)。これにより顧客に対して最短のリードタイムで製品を提供が可能となる。「ただし、住宅盤は、住宅の多様化に伴いバリエーションが増え、3万6000品番に拡大している。そのため、全ての品番を在庫するのは難しいので、仕掛かり部材のところで在庫し、顧客から要望に応えて完成品にする。現在、現場から指示があれば約2時間で出荷することを目指して対応している」(矢尾氏)という。
その他、タブレッドやバーコードリーダー、トレーサビリティー管理システムなどIT化を積極的に取り入れ、生産品質安定化と作業ロス削減を推進する。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で「工場版の新たな生活様式」の確立を推進。分散居室化や体温測定などの他、製造レイアウトも距離を空けられるような工夫を行っているという。
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