CAD、PLMからARまで、SaaSはニューノーマルの最適解:LiveWorx 20 Virtual(2/2 ページ)
PTCはバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」で、同社のSaaS型ソリューションの特徴や最新事例について語った。また、特にリモートワークに役立つARソリューションおよび、その開発環境についても紹介した。
Atlasへの搭載でARは真価を発揮する
キャンベル氏は「Onshapeが価値を発揮するのは製品開発の場だけではない。ARアプリケーションの持つ価値もまた最大化できる。これはOnshape(Atlas)上に構築されたVuforiaスイートで実証済みだ」と語った。
現在、産業界では熟練者の持つ技術が退職によりどんどん失われている。また製品・サービスは多様化して複雑になる一方だ。ニーズは目まぐるしく変化しており、他社と差別化できる製品やサービスを迅速に提供しなければ生き残ることはできない。「さらに今回のCOVID-19によって、状況はより困難になった。われわれはまさに今、新しい現実を受け入れなければならない状況に直面している」(キャンベル氏)。そして「新しい現実は、より仮想的になる」とキャンベル氏はいう。
PTCのARソリューションであるVuforiaのラインアップには現在、「Vuforia Spatial Toolbox」、カスタムARアプリケーションを開発する「Vuforia Engine」、ARコンテンツを作成する「Vuforia Studio」、熟練者のナレッジを記録/シェアする「Vuforia Expert Capture」「Vuforia Chalk」の5つがある。
その中で最近リリースされたのがVuforia Spatial Toolboxだ。これはオープンソースの空間コンピューティングの開発環境であり、イノベーターや研究者向けに、リアルタイムARに関する研究開発アプリケーションとして提供される。
COVID-19を受けて無償提供
Vuforia Chalkは、現場で発生した問題についてすぐに知りたいときに、リモートで画像を共有し、状況を説明してフィードバックを得られるシステムである。リアルタイムに画面上に書き込みをすることができ、画面が動いたりズームアウト/ズームインを行ったりしても、書き込みは対象物に追随する。
鉱山の換気や廃水処理の関連装置を製造するHowdenは、専門家によるリモートアドバイスのために、容易に使え、大規模に展開できるVuforia Chalkを選んだ。同社は最近まで、このツールを、本社にいる専門家が現場の自社の技術者にアドバイスするといった社内用途に限定して使用していた。だが、最近のCOVID-19の影響による外出自粛の状況を受け、同社は顧客を直接サポートするためにも使い始めた。これによりサービスコストや出張費の削減とともに、従業員の安全性を確保した。
「外出自粛が始まったとき、Vuforia Chalkがこの状況に対して非常に有用であることがはっきりした。そのため、2020年3月には無償での提供を始めた」(キャンベル氏)。この取り組みは好評で、現在数千の企業が利用しているという。無償提供の期間は現時点では同年8月31日までとなっているが、COVID-19の影響が続く間は無償提供を続ける方針だとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- PTCのOnshape買収は新型コロナ前から見据えていたニューノーマルへの布石
米PTCは年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx」のオンライン版「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。基調講演の中で、エンジニアリング領域におけるクラウド/SaaS活用を推進するキーとなる「Onshape」のテクノロジーとその有効性について説明が行われた。 - DXを実現し成果を挙げる設計・生産部門、そのカギを握るPTCのテクノロジー
PTCは年次ユーザーカンファレンス「LiveWorx 20 Virtual」をオンライン上で開催した。本稿ではPTC製品を導入した製造業者のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)の取り組みを紹介した基調講演を取り上げ、その内容を抜粋してお届けする。 - “ニューノーマル”でモノづくりはどう変わるか、ロックウェルとPTCの取り組み
米PTCは2020年6月9日(現地時間)、同社初となるバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。本稿では「Expanding Human Possibility(人の可能性の拡張)」をテーマとした、米Rockwell Automation会長兼CEOのブレイク・モレット氏による講演の内容を紹介する。 - 高度なデジタルツインを実現し、顧客企業のデジタル変革を加速させるPTC
PTCの年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx 2019」の基調講演に登壇した同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン氏は、「Digital Transformation:Harnessing New Technology for Industrial Innovation(DX:産業革新のための新技術の活用)」をテーマに、デジタルトランスフォーメーションの重要性や、その実現を支えるPTCの最新の取り組みについて紹介した。 - AR事業を強化するPTC――TWNKLSの買収、そしてAIを活用した「Vuforia Engine」
PTC主催の年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx 2019」では、AR(拡張現実)技術の業務適用に関する発表が目立った。AR製品担当であるマイク・キャンベル氏のコメントを交え、同社が強化するAR事業の取り組みについて紹介する。 - Googleドキュメントみたい! 無償クラウド3D CAD「Onshape」を使ってみた
一切の作業がクラウド上で出来る無償の3D CAD「Onshape」を試してみたら、かなり使えた! Webブラウザで動作していることを忘れるほどの操作感だ。無償なのに、パラメトリックモデリングにアセンブリなど高度な機能を備えている。