PTCのOnshape買収は新型コロナ前から見据えていたニューノーマルへの布石:LiveWorx 20 Virtual(1/2 ページ)
米PTCは年次テクノロジーカンファレンス「LiveWorx」のオンライン版「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。基調講演の中で、エンジニアリング領域におけるクラウド/SaaS活用を推進するキーとなる「Onshape」のテクノロジーとその有効性について説明が行われた。
米PTCは2020年6月9日(現地時間)、同社初となるバーチャルライブイベント「LiveWorx 20 Virtual」を開催した。
「LiveWorx」は同社の年次テクノロジーカンファレンスとして、毎年6月に米国マサチューセッツ州ボストンで開かれ、世界中から5000人以上が来場する一大イベント。だが今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、「LiveWorx 2020」をオンライン展開することとなった。
同イベントでは、同社 社長 兼 最高経営責任者(CEO)のジェームズ・E・ヘプルマン(James E. Heppelmann)氏の基調講演をはじめとするテクノロジー分野別の9つの講演と、100以上のテクニカルセッションを展開(これらは同年6月19日まで視聴可能)。さらに、ユーザー交流の場としてオンラインネットワーキングラウンジを設けるなど、バーチャルライブイベントならではの工夫も見られた。なお、同イベントへの参加は無料で、世界中から約1万5000人の登録があったという。
本稿では、「Disrupted:Lessons Learned and the Path Forward(破壊:学んだ教訓と進むべき道)」と題し、COVID-19という前例のない事態の中で学んだ教訓を踏まえ、技術とビジネス戦略の側面から、次の時代にどう向かうべきかを提言した、へプルマン氏の基調講演の内容を抜粋してお届けする。
不安定で予測できない時代へ、ニューノーマルへの対応
冒頭へプルマン氏は、COVID-19が与えた人的被害、社会や暮らし、そして経済への影響に触れながら、「こうしたかつて経験したことのない危機の中において、最高のモノももたらされた」とし、デジタルの力により、快適なリモートワーク(在宅勤務)環境が構築され、通勤や出張といった時間的なムダを排除した効率的な働き方にシフトできたことを挙げる。同時に、へプルマン氏は「だが今回、全ての人たちがデジタルの恩恵を受けたわけではない。今後はそういった領域に対しても手を差し伸べていきたい」との考えを述べる。
さらに、へプルマン氏は「COVID-19によるパンデミックは過去10年間で人類が経験してきた一連の混乱の一部に過ぎない」とし、不安定で予測できない時代に突入したことを受け入れる必要があると指摘。その上で、「われわれはニューノーマル(New Normal)に対応し、繁栄していくための方法を見つけ出さなければならない」(へプルマン氏)との考えを示した。
そして、次の時代、ニューノーマルへの布石となる大きな話題として、へプルマン氏は「Creo 7.0」のリリースと、クラウド/SaaS(Software as a Service)戦略について触れた。特に後者は、同イベントの中でも大きな話題の1つといえるため、本稿でもこの話題を中心にお届けする。
「Creo 7.0」は登場以来、最大のリリースに!
まずは、Creo 7.0だ。Creo 7.0は、同年4月に発表された同社3次元設計ソリューション「Creo」の最新バージョンである。
設計開発業務を支援する最新テクノロジーを完全統合し、それらをシームレスに利用できる環境を提供してきたCreoの思想はそのままに、Creo 7.0ではジェネレーティブデザイン、リアルタイムシミュレーション、マルチボディ設計の他、アディティブマニュファクチャリングやCAMに関する機能強化が図られている。さらに、コア機能に対して数百にもおよぶ拡張がなされており、「Creo 7.0は、PTCの最も野心的で革新的なリリースの1つだ。初めてCreoを皆さんに紹介して以来の最大のリリースといえる」とへプルマン氏は強調する。
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