日立とマイクロソフトが提携拡大、製造・流通分野で「Lumada」と「Azure」を融合:製造マネジメントニュース
日立製作所と日本マイクロソフトは、東南アジア、北米、日本における製造と流通分野向けの次世代デジタルソリューション事業に関する複数年にわたる戦略的提携に合意。第1弾として、日立が2020年7月からタイにおいて提携に基づくソリューション提供を開始する。
日立製作所と日本マイクロソフトは2020年6月26日、東南アジア、北米、日本における製造と流通分野向けの次世代デジタルソリューション事業に関する複数年にわたる戦略的提携に合意したと発表した。第1弾として、日立が同年7月からタイにおいて提携に基づくソリューション提供を開始する。また、今回の提携を通じて、両社が協力して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う遠隔地での保守や自動化、省人化の需要拡大に対応したソリューションを提供していくという。
具体的には、日立が製造、ロジスティクス、メンテナンスなどの分野で提供する「Lumada」ソリューションや日立産機システムのIoT(モノのインターネット)対応産業用コントローラー「HXシリーズ」などと、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」や「Dynamics 365」、「Microsoft 365」などを組み合わせ、企業の生産性向上や業務効率化を支援する。また両社は、今回の提携を推進するのに必要なデジタル人財の育成を共同で進める。
「Lumada Solution Hub」からソリューションを提供
今回の提携により日立は3つのソリューションを提供する。1つ目は「生産性向上を実現するマニュファクチャリングの高度化」だ。日立の「Hitachi Digital Supply Chain(日立デジタルサプライチェーン)」やマイクロソフトの「Azure IoT」などを活用して、製造現場の4M(Man=人、Machine=設備、Material=材料、Method=方法)データを収集して、生産の進捗確認や設備の稼働状況、作業員の動作などの見える化と分析を行い、工場の運用最適化と顧客の生産性向上を図る。
2つ目は「データアナリティクスによるロジスティクスの最適化」である。日立の「Hitachi Digital Solution for Logistics/配送最適化サービス」や、マイクロソフト「Azure Maps」などを活用して、配送の条件(納品日時、物流拠点の位置、走行ルート・時間、渋滞、積荷時間など)や熟練者の経験を取り入れたデータ分析により、効率的な配送計画を自動立案することで、顧客の物流コストの削減や配送業務の効率化を支援する。
3つ目は「予兆保全とリモートアシストによるメンテナンス」。マイクロソフトのMR(複合現実)ヘッドセット「HoloLens 2」とファーストラインワーカー向け遠隔支援ソリューション「Dynamics 365 Remote Assist」などを活用し、製造や流通の現場とオフィスをシームレスにつなぎ、写真、テキスト、音声などによる作業証跡の保存、遠隔での作業指示を可能とすることにより、現場の作業員の作業効率化や高品質化を支援する。
これらデジタルソリューションの導入と管理には、日立が2019年4月から展開を開始した「Lumada Solution Hub」を利用する。これにより、顧客はAzure上でのデジタルソリューションの早期検証から本番環境へのスムーズな移行、複数拠点への効率的な展開などが可能になる。
また今後、両社は、北米や日本での事業展開や、製造や流通の分野以外の協業範囲の拡大を検討していく。さらに、両社共通の顧客に対する付加価値を提供するために、LumadaとAzureの産業データ基盤の連携に向けた協議も開始する。
日立製作所 執行役常務 産業・流通ビジネスユニットCEOの阿部淳氏は、今回の提携について、「マイクロソフトとの協業を拡大し、OT、IT、プロダクトという幅広い領域におけるデジタルソリューションを展開できることをとてもうれしく思う。日立は、Lumadaを活用してサイバー空間とリアル空間をつなぐことで課題を解決するトータルシームレスソリューションを提供しており、今後、マイクロソフトとの連携を通じて、顧客のデジタルトランスフォーメーションを加速し、社会、環境、経済価値の向上に貢献していきたい」と語る。
米国マイクロソフト Manufacturing Industry担当バイスプレジデントのチャリオン・アルカン氏も「ビジネスを成長させ、今日の急速に変化する環境下で顧客のニーズを満たすには、復元力のある柔軟なデジタルサプライチェーンを構築することが非常に重要だ。日立との協業拡大を通して、製造とロジスティクス分野の企業は、業界をリードし、データドリブン型のマインドセットとデジタル活用スキルを備えた先駆者になる新たな機会を切り開くことができるだろう」と述べている。
関連記事
- データで「何」を照らすのか、デジタル変革の“際”を攻める日立の勝算
産業用IoTの先行企業として注目を集めてきた日立製作所。同社が考えるデジタル変革の勝ち筋とはどういうものなのだろうか。インダストリーセクターを担当する、日立製作所 代表執行役 執行役副社長 青木優和氏に話を聞いた。 - コングロマリットを価値に、日立が描く「つながる産業」の先にあるもの
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を中核としたデジタルソリューション事業の拡大を推進。その1つの中核となるのが、産業・流通ビジネスユニットである。日立製作所 執行役常務で産業・流通ビジネスユニットCEOの阿部淳氏に取り組みについて聞いた。 - 製造業がデジタル変革で実現すべき3つのポイントとは――マイクロソフトの提案
日本マイクロソフトは製造業を取り巻く環境が大きく変化する中、「Factory of the future」「Product as a Service」「Intelligent Supply Chain」の3つの方向性での取り組みを進める方針を示した。 - インテリジェントなエッジとクラウドの連携からマイクロソフトが生み出すもの
日本マイクロソフトが開発者向け年次イベント「de:code 2018」(2018年5月22〜23日)を開催。初日の基調講演では、クラウドプラットフォーム「Azure」や統合開発環境「Visual Studio」、MR(複合現実)などの最新技術について来日した米国本社の担当者が紹介した。 - DXのPoCから立ち上げを迅速かつ容易に、日立が「Lumada Solution Hub」を投入
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を用いたデジタルトランスフォーメーション(DX)を迅速かつ容易に行えるサービス「Lumada Solution Hub」を開発したと発表した。2019年4月1日から順次販売を始める。 - マイクロソフト、「HoloLens 2」で没入感や快適性を向上
Microsoftは、新しいMRデバイス「Microsoft HoloLens 2」を発表した。没入感や快適性の向上、価値創造までの時間短縮など、初代モデルへの要望に応える形で機能が強化されている。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.