DXのPoCから立ち上げを迅速かつ容易に、日立が「Lumada Solution Hub」を投入:製造ITニュース
日立製作所はIoTプラットフォーム「Lumada」を用いたデジタルトランスフォーメーション(DX)を迅速かつ容易に行えるサービス「Lumada Solution Hub」を開発したと発表した。2019年4月1日から順次販売を始める。
日立製作所は2019年3月18日、東京都内で会見を開き、同社のIoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada」を用いたデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を迅速かつ容易に行えるサービス「Lumada Solution Hub」を開発したと発表した。同年4月1日から順次販売を始める。
Lumada Solution Hubは、日立製作所が顧客との協創で培った技術やノウハウを結集したLumadaソリューションやアプリケーション開発環境を導入しやすい形にパッケージ化してカタログに登録し、クラウド基盤上で提供するサービスだ。同社 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 事業本部長の熊﨑裕之氏は「2016年5月にLumadaの提供を始めてから、さまざまな顧客との協創により600件以上のユースケースを積み重ねてきた。これらのユースケースから、DXをなかなか進められない2つの壁があると感じている」と語る。
1つ目の壁は、数多くの試行錯誤が必要になることだ。方法を変えて何度も試行した上で、予算執行期限を迎えるなどしてPoC(概念実証)で終わってしまうことも多い。2つ目の壁は、データを簡単に動かせないという問題。社内データは外に持ち出せない上に、パブリッククラウドのデータを外に持ち出すのにもコストがかかる。
Lumada Solution Hubは、これら2つの壁を打破しDXを容易に実現するために開発された。1つ目の壁に対しては、Lumadaのユースケースなどを通して既に実績のあるソリューションを使うことで試行錯誤を減らし、成功率を高めることで対応する。2つ目の壁は、データを持ってくるのではなく、データのあるところにソリューションをデプロイするという逆転の発想で対処する。「欧州のGDPRや中国のことを考えれば、データは動かせないと考えた方がいい。であれば、データのあるところにソリューションをデプロイすべきだ」(熊﨑氏)という。
エコシステムの充実も進める
Lumada Solution Hubは、コンテナ型の仮想化環境を提供する「Docker」や、コンテナの配備、設定、管理を行う「Kubernetes」などOSS(オープンソースソフトウェア)を適用することで、Lumadaソリューションを再利用可能な形にパッケージ化し蓄積するとともに、IaaSへの高速なデプロイを一括して管理、実行することが可能である。
提供形態は、まず2019年6月に、プライベートクラウド環境を提供する日立製作所の「出前クラウド」版から始め、同年7〜9月期からAWS(Amazon Web Services)やマイクロソフトの「Azure」、日立製作所の「日立エンタープライズクラウドサービス」といったパブリックラウドに対応していく計画だ。「AWS、Azureの他にも、Kubernetesに対応しているパブリッククラウドでも利用できるようにしていきたい」(日立製作所 サービス&プラットフォームビジネスユニット サービスプラットフォーム事業本部 シニアテクノロジーエバンジェリストの中村輝雄氏)。
また、アプリケーション開発環境を構築するための「IoT向けDevOps環境提供サービス」の販売も2019年4月1日に始める。アジャイル開発に適したプロジェクト管理ツール「Redmine」などによる開発チームと運用チームが一体となったDevOps(Development Operations)スキームの迅速な立上げの支援や、GUIプログラミングツール「Node-RED」などを活用したアプリケーション開発の支援を行う。これらによって、顧客のアプリケーション開発を促進するとともに、Lumadaのエコシステムの充実も進めたい考えだ。
なお、実際にLumada Solution Hubを用いる場合、顧客の業務に合わせて選定したカタログからソリューションを選んだ後、分析に使用するデータと分析ツールを選ぶだけで、PoCの初期段階に進められる。「これだけの簡単操作でできるものなので、いきなり顧客にとって100%満足のいく内容にはなっていないだろう。しかし、早期に試す環境という意味では十分でいろいろ試せるはずだ。ここから本番環境への移行もスムーズに行える」(中村氏)という。
なお、Lumada Solution Hubのカタログに入るパッケージ化されたソリューションは、製造ダッシュボード、配送最適化、ブロックチェーンをはじめ2019年度中に約30件をそろえる計画である。その後2021年度までに「3桁まで積み上げたい」(熊﨑氏)としている。
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