大量生産から多品種少量まで、日立の「Lumada」が化学工場をスマート化:スマートファクトリー
日立製作所は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2018 TOKYO」において、顧客との協創によって開発を進めている、IoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」の化学工場向けソリューションを展示した。
日立製作所は、プライベートイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2018 TOKYO」(2018年10月18〜19日)において、顧客との協創によって開発を進めている、IoT(モノのインターネット)プラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」の化学工場向けソリューションを展示した。
今回展示では、昭和電工のエチレンプラントで実証を経て実用化した、石油化学プラント向けのAI(人工知能)活用予兆診断サービス「ARTiMo(アルティモ)」と、ダイキン工業との協創の第2弾となる、化学品製造工程反応プロセスの品質管理ノウハウをデジタル化する取り組みがあった。
ARTiMoは、一般的な予測モデルを用いた予兆診断システムや人の判断では検知が困難だった、プラントを構成する機器や設備などの複合要因による異常を早期に検知できるサービスだ。あらかじめ正常な状態の化学プラントの運転データを用いて学習しておき、AIのデータクラスタリング技術の1つであるART(適応共鳴理論)により、データの特性に基づくカテゴリーごとに分類。その後、実際の運転データをリアルタイムで監視し、正常カテゴリー以外の新たなカテゴリーが発生したときにアラートを発信して、オペレーターに判断を促す。オペレーターがそのカテゴリーに対して正常/異常を判断することで、さらに学習を重ねられるという仕組みだ。
プラントの予兆診断だけでなく、これまで把握が難しかったプラントの故障要因となるコーキング(固体(コーク)が配管内などに付着する現象)の発生条件を解析することもできたという。「これまでは熟練オペレーターの直感に基づいて判断していたが、それをデータとして予兆を見える化できるようになった」(日立製作所の説明員)という。2018年10月からは、昭和電工の大分コンビナート(大分県大分市)内のエチレンプラントの実業務における運用が始まっている。
より実験室に近い手法で行う多品種少量の化学品生産
ARTiMoが大規模生産を行うエチレンプラントを対象とする技術なのに対し、ダイキン工業との協創第2弾は、多品種少量の化学品生産プロセスが対象となっている。
同社の淀川製作所(大阪府摂津市)におけるフッ素化学品の生産は、圧力容器や配管、DCS(分散制御システム)から構成される大規模プラントとは異なり、フラスコと撹拌器を用いて合成反応を進めるなど、より実験室に近い手法で行っている。こういったフラスコと撹拌機を用いた合成反応の収率(歩留まり)は、溶液の色の変化や発泡状態に合わせて薬剤を投入するなどのノウハウによって左右されることが多い。
日立製作所とダイキン工業の取り組みでは、4M(Man:人、Machine:設備、Material:材料、Method:方法)の観点で、撹拌器の回転数や溶液の温度といったセンサー情報に加え、フラスコ内部の状態をカメラで監視してデータを収集。液色や泡、攪拌状態の画像データを数値情報に置き換えて、品質との相関性を解析した結果、従来の目視確認では把握できなかった、完成品の品質を左右する定量的な判断基準を確立でき、不良率低減、生産性向上の見通しが得られたという。
2018年10月からはこの成果の共同実証に入る。2019年1月には、実業務への適用を始めたい考えだ。「ダイキン工業とは、ろう付け作業の熟練技能を伝承するための取り組みで成果が出ており、今回の多品種少量の化学品生産プロセスは、熟練技能伝承という枠組みの第2弾となる」(日立製作所の説明員)としている。
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