この記事は、2020年6月11日発行の「モノづくり総合版メールマガジン」に掲載されたMONOistの編集担当者による編集後記の転載です。
新型コロナは“壁”を壊せるか、停滞する製造業のデジタル変革
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるモノづくりへの影響が拡大しています。感染拡大のピークは何とか抑え込めつつあるものの、製造業の業務への影響は大きく深く出ています。そしてその影響は長びくことが懸念されています。MONOist、EE Times Japan、EDN Japanのアイティメディア製造業向け3媒体では、COVID-19のモノづくりへの影響についての第2回読者調査を5月に実施しましたが、影響が広く重くなっている結果が明確に出ていました。
読者調査の結果については、以下の記事をご覧いただければと思いますが、ソーシャルディスタンスや在宅勤務が求められる中、製造業の中でも大きな関心事となっているのが、テレワークをはじめとしたデジタル技術を活用した新たな働き方です。読者調査結果でも「COVID-19への対応策として導入しているもの」「今後期待する技術やツール」の2つの質問に対し「テレワークシステム」が最も多い回答となりました。
また、自由回答で「COVID-19で考えた理想の働き方」を聞いた質問でも「コミュニケーションを重視しながら、勤務地にとらわれない働き方」や「テレワーク併用で全て出勤しない形態」「場所や時間にとらわれず通常通り業務ができる環境があること」「テレワーク可能な業務と出社が必要なものを分け効率的に出社する」など、従来の働き方を見直し、場所を選ばない働き方へ転換するような声が数多く集まっています。
製造業である以上、工場やモノづくりの現場を完全に無人化するのは不可能です。また、現在は設計や開発環境などでもマシンパワーの問題や守秘義務などの問題から、ワークステーションが固定化されており、出社を余儀なくされる状況があることなどもよく聞きます。ただ、その場にいることが当たり前だった環境を見直し「現場にいること」が不要な場合は、場所を選ばない働き方が必要だとする流れは確実に強まっているといえるでしょう。
停滞する製造業のデジタル変革
こうした柔軟で効率的な働き方を実現する基盤となるのが、デジタル技術です。しかし、一方で製造業のデジタル化の観点からネガティブな調査資料がちょうど2020年5月29日に公開されました。「2020年版 ものづくり白書」です。
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