製造業のデジタル変革が停滞、設計力がカギに――2020年版ものづくり白書公開:製造マネジメントニュース
経済産業省と厚生労働省、文部科学省は2020年5月29日、製造業やモノづくり技術の動向について毎年取りまとめている「2020年版 ものづくり白書」を公開した。
経済産業省と厚生労働省、文部科学省は2020年5月29日、製造業やモノづくり技術の動向について毎年取りまとめている「2020年版 ものづくり白書」を公開した。
ものづくり白書とは「ものづくり基盤技術振興基本法(平成11年法律第2号)第8条」に基づき、政府がものづくり基盤技術の振興に向けて講じた施策に関する報告書だ。経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で作成している。
「2020年版 ものづくり白書」では、不確実性の高まる世界における企業変革力の向上に向けてデジタル化が大きなポイントになると訴えている。また、その中でデジタル化により「設計力」にフォーカスした点が特徴となっている。
製造業のデジタル変革は停滞
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響によるサプライチェーンの寸断など、製造業においても不確実性の高まりが加速している。その中で企業に求められるのは、環境変化に対応するために組織内外の経営資源を再構成する企業変革力(ダイナミックケイパビリテティ)だとする。「ダイナミックケイパビリティの要素は『感知』『捕捉』『変容』の3つの能力」(UCバークレー校ビジネススクール教授のデビッド・J・ティース氏)だとし、これらを高めるためにデジタル化が重要なポイントになると「ものづくり白書」は主張している。
ただ、日本の製造業のデジタル化への取り組みは停滞している。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019年12月)によると、製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業の割合は、2017年度が67.6%とピークとなったものの、2018年度、2019年度と減少している。2019年度に「データ収集している」とした企業は51.0%で約半分程度に落ち込んでいる。
加えて「個別工程の機械の稼働状態について見える化を行い、改善などに取り組んでいるか」という質問に対し「実施している」「実施する計画がある」とした企業の割合は32.1%で、2018年度の32.8%に比べて減少している。その他の項目でも横ばいや減少傾向にあり、ここ数年広がりを見せてきた製造業のデータ活用の流れは頭打ちとなっている状況が伺える。
競争力のカギ握る設計力強化
デジタル化の進展に伴い、競争力の源泉はエンジニアリングチェーンの上流にシフトしており、エンジニアリングチェーンの上流を厚くすることで設計力を強化し、設計から生産までのリードタイムを短縮する。フロントローディングにより企業変革力を強化することを訴える。
設計を強化し、フロントローディングを進めるためには、データの活用や設計のデジタル化による設計、製造、サービスの連携が必要になる。しかし、日本の製造業では、3D CADの普及率が欧米に比べて低く、企業間や部門間でのデータの受け渡しが図面を中心に行われているところも数多く残っている。この理由として、主な設計手法が2Dであること、調達部門が見積もりのために図面を必要とすること、発注内容と現物を照合する現品表を兼ねていることなどがある。これらの環境を変えていく必要があるとしている。
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