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第4次産業革命で取るべき戦略、スキル人材の活用と技能のデジタル化ものづくり白書2019を読み解く(3)(1/5 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2019年版ものづくり白書」が2019年6月に公開された。本連載では3回にわたって「2019年版ものづくり白書」の内容を掘り下げる。第3回となる今回は、第4次産業革命において製造業が取るべき戦略の内「スキル人材の活用」と「技能のデジタル化、省力化」について取り上げる。

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 2019年6月に公開された「平成30年度ものづくり基盤技術の振興施策」(以下、2019年版ものづくり白書)を読み解く本連載。第1回の「データで見る日本の製造業の現況と、日本を取り巻く3つの潮流」では、日本の製造業の現状を、データを用いながら確認するとともに「第4次産業革命の進展」「グローバル化の展開と保守主義の高まり」「ソーシャルビジネスの加速」という日本を取り巻く3つの潮流について説明した。第2回では、これらに対応するための「第4次産業革命に対する日本の製造業の取るべき戦略」の中で、「世界シェアの強み、良質なデータを生かしたニーズ特化型サービスの提供」「第4次産業革命下の重要部素材における世界シェアの獲得」について掘り下げた。

 第3回となる今回は、「第4次産業革命に対する日本の製造業の取るべき戦略」の中で「新たな時代において必要となるスキル人材の確保と組織作り」と「技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施」について解説する。

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新たな時代において必要となるスキル人材の確保と組織作り

 2019年版ものづくり白書では、日本の製造業が直面する大きな変化に対応するためには新たな能力構築が必要であり、特にデジタル化への対応に必要な人材の獲得や育成が求められると述べている。

デジタル化への対応

 デジタル化への対応の観点から、ITリテラシーの必要性を企業に尋ねたところ、ITリテラシーの必要性について、「必要性を感じる」と答えた企業は8割近くに及んでいる(図1)。

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図1:リテラシーの必要性(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 また、ITリテラシーの必要性と業績の動向(2017年12月比)の関係を見てみると、「ITリテラシーの必要性を感じている」と答えた企業は、「必要性を感じない」と答えた企業に対し、売上高、営業利益が共に増加している結果となっている(図2、図3)。デジタル化が加速する中、人材の能力面での対応として、ITリテラシーへの意識は企業の成長と関係があるといえる。

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図2:リテラシーの必要性と売上高(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書
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図3:リテラシーの必要性と営業利益(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 本連載第1回でも触れたが、日本の製造業における人材確保の問題は年々深刻化している。このような状況の中で日本の製造業の生産性を向上させるためには、設備投資やシステム投資を行い、新時代に対応したものに変革していくことが求められる。ただ、これらの新しい設備やシステムを使いこなせる人材が並行して必要となる。ITリテラシーについて、特に必要性を感じる部門を尋ねると、生産管理(52.8%)、製造部門(46.2%)、品質管理部門(31.6%)を挙げる企業が多い(図4)。

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図4:ITリテラシーを特に必要と感じる部門(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 また、第1回では、日本の製造業は生産管理や製造工程における現場の課題解決力や熟練技能が強みだと認識していることを示したが(図5)、これらを強みとして今後も生かしていくには、これまで技能者などの知覚を通じて行われてきた製造現場のオペレーションを、デジタルデータを通じたものに置き換えていくことが必要となる。そのためには、デジタルツールを活用し、価値を生み出すためのデータ加工を行える能力が求められる。

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図5:米国・ドイツ・中国・国内企業と比べた自社の優位性(クリックで拡大)出典:2019年版ものづくり白書

 加えて、今後は製造部門の部分最適にとどまらず、企画・設計といった上流工程や販売・アフターサービスあるいはサービス提供といった下流工程も含めた全体最適を図っていく必要がある。そのためには、生産管理や製造工程のデータをサプライチェーン全体やエンジニアリングチェーンとも結び付け、データを活用できる人材を育成していく必要性もある。

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