日立が人工呼吸器の組立作業手順書を無償公開、専用コミュニティーも立ち上げ:製造ITニュース
日立製作所は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大のため需要が逼迫(ひっぱく)している人工呼吸器の製造支援を目的に、同社の「組立ナビゲーションシステム」を活用した3D作業手順書を無償で公開すると発表した。
日立製作所は2020年6月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大のため需要が逼迫(ひっぱく)している人工呼吸器の製造支援を目的に、同社の「組立ナビゲーションシステム」を活用した3D作業手順書を無償で公開すると発表した。同日から1年間、クラウドサービス(SaaS形態)で提供し、PCやタブレット端末などのWebブラウザから容易に閲覧することが可能になる。
組立ナビゲーションシステムは、製品を設計する際に作成される完成品の3D CADデータから、現場作業者が直感的に理解しやすい3Dの作業手順書に自動で変換できるシステムである。日立の大みか事業所(茨城県日立市)で確立された「高効率生産モデル」の技術とノウハウを汎用化し、さまざまな製造現場における作業者の負荷軽減と生産性向上に向けて、日立が注力する「Lumada」ソリューションの一つとして2017年11月に製品化されている。
今回無償提供する3D作業手順書は、アイルランドのメドトロニック(Medtronic)が2020年4月7日に設計仕様を無償公開した人工呼吸器「Puritan Bennett 560」の3D CADデータを、組立ナビゲーションシステムに取り込んで作成したもの。組立工程ごとに自動で作業手順化して公開する。今後は、利用者間で意見交換を行う専用コミュニティーを立ち上げ、作業手順などのノウハウを共有できるサービスの提供も予定しているという。
設計データを読み解き組立作業を行うことが生産現場の負担に
組立製造業では、設計者が3D CADなどを使って設計データを作成し、現場作業者がその設計データに基づいて組立作業を行うのが一般的だ。しかし、専門的な設計データを読み解きながら組立作業を行うことが、生産現場の負担になっているという課題がある。
日立の組立ナビゲーションシステムは、完成品の3D CADデータから設計・構造情報を取り込み、独自のアルゴリズムにより分解順序と分解動作の分析を行って、適正な組立順で3D作業手順書を自動生成する。1つの作業について1画面で、組立順に沿って表示し、作業者が設計データから組立の順番を読み解く手間を省く他、画面に表示される各手順に従っての効率的な組立作業も支援してくれる。詳細に確認したい設計や構造は、回転、拡大、縮小して確認できるので、直観的に理解しやすい作業手順の自動生成も可能になるとしている。
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