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細胞内の水を利用して細胞中の温度を無染色で可視化する手法を開発医療技術ニュース

東北大学は、細胞中に存在する水をラマン顕微鏡と呼ばれる手法を用いて観測することで、細胞内の温度分布を無染色で可視化する手法を開発した。細胞内温度をその場で可視化でき、薬剤の細胞内導入に伴う細胞内温度の上昇も測定できる。

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 東北大学は2020年5月14日、もともと細胞中に存在する水をラマン顕微鏡と呼ばれる手法を用いて観測することで、細胞内の温度分布を無染色で可視化する手法を新たに開発したと発表した。

 細胞内には、ほぼ全ての領域に水がある。研究チームは今回、この水に着目。水分子間に形成される水素結合の強さは温度に依存するため、細胞内に存在する水分子の水素結合の強さを測定することで、細胞内の温度上昇を測定、画像化することに成功した。

 水素結合の測定には、ラマン散乱を画像化するラマン顕微鏡を使用。温度変化に伴うラマンバンドの変化の大きさから温度の検量線を作成し、この検量線を用いて細胞内の温度をラベルフリーで測定することに成功。ヒトの子宮頸がん由来のHela細胞を使って高速測定を行った結果、核と細胞質それぞれで検量線が得られた。

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a)HeLa細胞内のラマンバンドのイメージング。b)細胞の温度の検量線(クリックで拡大) 出典:東北大学

 また、核と細胞質の温度検量線を用いて、薬剤導入に伴う細胞内の温度上昇も測定した。測定値は、蛍光色素を用いて得られた結果と一致している。

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薬剤導入前後の温度 出典:東北大学

 さらに、単一細胞の温度イメージを画像化した。水は細胞内外に存在するため、細胞外温度の測定も可能だ。細胞質から細胞外にかけて温度が低下する変化の可視化にも成功している。

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a)HeLa細胞の温度イメージ(A:細胞質、B:培地)。b)温度変化のイメージ上の(A)から(B)にかけての断面図(クリックで拡大) 出典:東北大学

 細胞内の温度は、細胞の活性状態やさまざまな生命現象と密接に関わっており、がん細胞が正常細胞より高温であることも知られている。細胞内温度を測定する方法としては、これまで温度感受性蛍光色素が用いられてきたが、前処理の必要性や色素導入による細胞内環境の変化という課題があった。

 今回の手法では、細胞内温度を専用の色素を用いずにその場で可視化できるため、薬剤の細胞内導入に伴う細胞内温度の上昇も測定できる。今後は、細胞の活性状態の判別に加え、さまざまな生理現象や疾患の発症メカニズム解明にも応用が期待される。

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