大災害の復旧支援に貢献、中部大発ベンチャーが長距離無人航空機の実用化へ:ドローン(2/2 ページ)
テラ・ラボは2020年5月20日、DRONE FUNDなどから総額3億円の資金調達に成功したと発表。今後は南海トラフ地震発生時などでの活躍を見込む長距離無人航空機や情報共有システムの事業化を目指す。
有人航空機との衝突回避リスクを減らす工夫が必須
今回出資を行ったDRONE FUND 共同創業者 兼 代表パートナーである大前創希氏は、テラ・ラボ独自の強みについて「長距離固定翼ドローンの開発に代表されるように、国内有数の高い技術開発力を有している。また、愛知県名古屋市や福島県などの地方自治体と連携が密であり、災害対応システム事業化の機会を増やしやすい。加えて、固定翼ドローンの開発時には飛行試験場の確保が障壁となるが、テラ・ラボは福島ロボットテストフィールドと連携しており、実証実験用の十分なフィールドを有している」と評価している。
今後、テラ・ラボは長距離無人航空機の実用化と事業化を目指して、さらなる機体開発を推進していく。具体的には、補助者無しで無人地帯あるいは有人地帯での目視外飛行が可能な無人航空機、及び、地上支援システムの開発などを目標とする。ただし課題もある。テラ・ラボの無人航空機はいずれも1000m以上の高度を飛行するが、現在の航空法では有人航空機との衝突リスクを回避するため、地上150m以上の高度は国土交通大臣の許可なしには飛行できない。
このためテラ・ラボ 代表取締役の松浦 孝英氏は、無人航空機の事業化を円滑に進めるために「当社自身が安全航行に対する倫理観を持った上で、許可取得に向けた努力をしていく必要がある。例えば当社は携帯電話網や衛星通信網によってBRLOS(直接電波見通し外)でも機体制御ができる仕組みの開発を進めてきた。また航空機が絶えず自機位置を放送するADS-B(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)を採用して、有人航空機との衝突リスクを回避する仕組みも取り入れた。FAA(米国連邦航空局)から検査を受け耐空証明を取得して、有人地域での航空機飛行も実現する予定だ。自然災害や人口減少などの課題先進国である日本において、ドローン前提社会の実現を今後も追求する」と語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- レーザー距離計で撮影対象をロックオン! DJIが新型産業用ドローン発売
DJIは産業用ドローンプラットフォーム「Matrice 300 RTK」やハイブリッドカメラ「Zenmuse H20T」などのオンライン説明会を開催した。対象物の追跡や記録撮影を効率化するための仕組みが施されている。 - ヤマ発が農業用ドローンに自動飛行機能を追加、RTK方式の位置測位で実現
ヤマハ発動機は農業用ドローン「YMR-08AP」を2020年3月中に発売する。高精度測位手法RTKと農業アプリケーションagFMSの組み合わせで自動飛行を実現。 - 無人航空機が緊急時に自律的に危険回避する技術の飛行実証試験を実施
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、無人航空機が緊急時に自律的に危険回避する技術の実証試験を実施した。同技術により、地上と無人航空機間の通信インフラが十分でなくても、無人航空機を安全に飛行できる。 - ドローンを活用した橋梁点検サービス、デンソーが開始
デンソーが、同社のドローンを活用した橋梁点検サービスを開始する。現在、目視で実施している橋梁点検の一部をドローンによる撮影に替えることで、危険な作業や点検車使用による交通渋滞を減らす。さらに撮影画像の解析や調書作成まで支援する。 - 相対速度時速100kmでの無人航空機の自律的な衝突回避に成功
新エネルギー・産業技術総合開発機構らは、福島県南相馬市の広域飛行空域で、相対速度100km/hでの中型無人航空機の自律的な衝突回避試験を実施した。中型の無人航空機が有人ヘリコプターを探知し、自律的に衝突を回避した。 - ドローン運航管理システムを相互接続するための試験環境を構築
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、「福島ロボットテストフィールド」において、ドローン運航管理システムを相互に接続するための試験環境を構築した。ドローンの飛行計画やリアルタイムな情報を他の事業者と共有できる。