コマツが取り組むスマートファクトリー、協力工場にも広げる「つながり」の輪:スマートファクトリー(2/2 ページ)
モノづくり関連の総合展示会「日本ものづくりワールド2020(2020年2月26日〜28日、幕張メッセ)」の特別講演に、コマツ 生産技術開発センタ 所長の山中伸好氏が登壇し、「コマツ流IoTで『見える化』『生産性改善』を実現した取り組み」をテーマに、同社のシステムや導入方法について紹介した。
工作機械700台以上、溶接ロボット約400台を接続して見える化
「KOM-MICS」の展開としては、まず既存機のデータを収集し、課題を抽出し生産性を高めることから開始した。これらのデータを生かし、品質保証(トレーサビリティー)やサプライチェーン最適化なども進めている。この生産現場改善の取り組みは社内だけではなく協力企業にも広げて、生産向上の支援を行っている。
現在、同システムは工作機械が705台(社内348台、協力企業337台、海外20台)、溶接ロボット395台(100台、142台、147台)が接続済みだ。同システムを用いることで、見える化により課題を洗い出して改善を進める。これらの取り組みにより、生産性を2倍に高めることが目標だという。具体的には「溶接では清掃のために停止していた時間を自動化で短縮する。加えて、大電流化することで溶接時間そのものの短縮にも取り組む。また、機械加工は停止や非加工時間を自動計測し予知機能などを活用することで短縮する。さらに、最適な工具や条件により切削時間の短縮にも取り組んでいる」と山中氏は語る。
「KOM-MICS」による改善技術の展開は、まず生産技術センタがある大阪工場で立案し、同センタでアプリケーション開発、基礎試験を実施する。次に大阪工場の実ワークで評価し、問題点をフィードバックする。その結果を受けて同センタでカスタマイズを行い、他工場にも導入していくという流れである。
そこでは、工場のQCサークルや部門報告における多種類のデータ変化や関連性解析などの「現状把握」などを行う他、歯止め、水平展開での効果確認、他工場との比較など「効果の確認」などを行う。「これまでこれらのデータを収集することが大変だったが、このKOM−MICSが使えることもあり、効率的に改善のアクションが行えるようになった」と山中氏は語る。
協力会社の導入については、大きな抵抗もあった。そこで、その中の1社を選定し、説明を繰り返して説得し、まず1台のトライアルから始めた。1カ月使用した結果、長年改善できなかった加工効率が改善できたことが確認されたことから6台に増設し、その後、導入を増やしながら効果を証明していった。さらに、その改善事例を他社にも紹介することで導入企業を増やすことができたという。
また、最近では品質向上面でも成果を残しつつあるという。AI手法であるディープラーニング(深層学習)を用いて溶接品質における正常溶接との違いを(再現誤差)を異常度として出力し、それを判定するなどの異常検知に使用する。この他、溶接機やポジショナーにセンサーを設置し、電気信号を抽出することで見える化を実現するなど人作業の稼働率モニターとしても活用しようとしている。
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