工場閉鎖やロックダウンが深刻な不況を招く可能性、コロナ最新予測レポート:製造マネジメントニュース
ローランド・ベルガーは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による経済的影響をまとめた最新レポートを公開した。2020年3月24日時点での情勢を踏まえた内容。
ドイツのコンサルティング企業であるローランド・ベルガー(Roland Berger)は2020年3月24日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う産業界への経済的影響をまとめた最新レポートを公開した。レポートでは経済の早期回復の望みは薄く、予測を超える深刻な不況に陥る可能性もあると指摘しており、同社が前回(同年3月12日)発表したレポートと比べて、さらに厳しい経済的な見通しを示している。
レポートでは産業分野のうち「自動車」「物流」「機械・エンジニアリング」「建設」「石油・ガス」などを取り上げて、それぞれの業界への経済的影響を予測している。
自動車業界ではサプライヤーの需要が減少することから、業界全体で大きな経済的な損失を受けると予測される。一方で、中国で新型コロナウイルス感染症の感染拡大に歯止めがかかりつつある現状を鑑みると、中国の経済回復によって売り上げ減少を2020年内に補完できる可能性もあるとしている。
物流業界では世界各地での工場閉鎖を背景に、海上輸送の需要が減少し業界全体で収益が減少すると予測される。また都市のロックダウンに伴う需要減少が、物流業界全体のキャッシュインフローをさらに減少させる恐れもある。ただ、事態終息後の反動によって需要が一時的に増加し(キャッチアップ効果)、減少分の収益を補完できる可能性もある。
機械・エンジニアリング業界は2018年以降、業界全体での注文量が減少傾向にある。この状況に新型コロナウイルス感染症の影響でプロジェクトの中止が相次ぐことで、収益がさらに大幅に減少する可能性がある。一方で、リードタイムが長期化しやすいプロジェクトを実施している企業では、キャッシュフローは比較的安定した状態に保たれると予測される。
建設業界では新築や改修プロジェクトの進行が遅延することによって、建設資材の需要が減少し、業界全体のキャッシュフローが悪化すると見込まれる。今後、労働者の解雇などの対応策が順次実施されていくと予測されるが、一方で、事態終息後には需要が大幅に増加すると考えられる。このことからレポートでは、2020年を通してみると業界全体の経済的損失は限定的なものになるだろうと指摘する。
石油・ガス業界では飛行機や自動車を使った移動需要が減少していることから、燃料の消費量が低下し、石油・ガスの余剰量が増加、石油・ガス価格は今後さらに低下していくと見込まれる。ただ中国での経済回復が進むことで、需要もある程度回復していくものと考えられる。
ローランド・ベルガーは新型コロナウイルス感染症への対応策を考える上では、事態終息後の対応も視野に入れつつ「短期資金繰りの悪化をどのように乗り切るか」「ロックダウンの期間中のコスト管理をどうするか」「事態終息後にどのように事業を再開していくか」といった諸点を検討する必要があると指摘する。
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