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強制対流による冷却を考える初心者のための流体解析入門(11)(4/4 ページ)

流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回のテーマは“強制対流による冷却”だ。

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例題で強制対流による熱伝達を理解する

 それでは例題として、電子基板上の小さなコンポーネントの冷却について考えてみましょう。このコンポーネントは、一辺が10mm(0.01m)の立方体形状で鉄製、室温(20℃)の空間に初期温度120℃で置かれているものとします。その状態で、ある流速の空気を強制対流で送り、10分間で30℃まで下げたいとします。

 ここでまず求めたいが、このコンポーネントを10分間で30℃にするために必要な熱伝達率です。この熱伝達率が分かったら、そこから流速を求める流れになります。ということで、先ほどの式10を用いて熱伝達率を求めてみましょう。

 式10の変数に、今回の数値を代入すると以下のようになります。

式11

 これは、さらに以下のようになります。

式12

 そして、さらにこの式は、

式13

となるので、最終的に熱伝達率は、

式14

と求めることができます。

 熱伝達率が、23.35W/m2Kであることが分かったので、今度はこの数値を先ほどの式9に代入し、流速を求めます。

式15

という式になるので、結果的に流速は、

式16

となります。ということで、必要な流速がざっくり0.4m/sであることが分かりました。

 それでは、CFDソフトを用いて、一辺0.01mの鉄製のコンポーネントが室温(20℃)の空間に初期温度120℃で置かれている環境に、強制対流で空気を送ってみましょう。ちなみに、一般的にPCなどで用いられるファンは、大きさにもよりますが、秒速1m(1m/s)程度のものが大半なので、今回のようなさらに小さくて冷やしやすい環境下にあるものとして、0.4m/sという数値は妥当であると考えられます。

 解析モデルの設定方法は、過去に紹介したものと比較しても簡単なので割愛しますが、図3の通り、600秒(10分)後に、確かにほぼ30℃を切るくらいに冷却できたことが分かります。

10分後に30℃以下に冷却できた
図3 10分後に30℃以下に冷却できた [クリックで拡大]


 今回は熱源などもない非常に簡単なモデルを取り上げましたが、実際にCFDソフトでシミュレーションを行う前に、きちんと背景となる理論を捉えておくことが、結果的により精度の高い設計と、効果的なシミュレーションにつながるということを、ご理解いただけたかと思います。それでは、また次回お会いしましょう! (次回に続く

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Profile

水野 操(みずの みさお)

1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。


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