材力とFEMをシッカリ理解して、シッカリ解析!:設計者CAEを始める前にシッカリ学ぶ有限要素法(1)(1/3 ページ)
小難しい有限要素法を数式を使わずに解説する。まずは有限要素法の歴史を振り返り、解析の基本的な考え方を確認。
有限要素法とは?
100年に1度の経済危機が製造業を揺さぶっています。僕も製造業関連の仕事をしているので、この大きなうねりに巻き込まれないわけにはいきません。「“100年に1度”の経済危機が僕の生きているうちに来ることないのに……!」とやり場のない腹立たしさを感じますが、そんなことはお構いなしに世界は動いています。
まぁ……クライ話で始まってしまいましたが、こんなときだからこそできることもあります。ニッポンが景気回復の先導となり、景気が回復することを祈りつつ、新しい連載を始めたいと思います(前回の連載:「仕事にちゃんと役立つ材料力学」)。
この連載では、「有限要素法」について解説していきたいと思います。何やら小難しそうな雰囲気を持った言葉ですね。強度解析を行った人であれば、聞いたことがある言葉かもしれません。有限要素法は解析のコアとなる計算技法で、この技法がないと解析が成り立たないといっていいでしょう。
実は、有限要素法の基礎を知ることは、これまでの連載で解説してきた「材料力学」と相まって、評価に値する正しい解析を行うためにとっても重要なことなのです。
この連載では、材料力学の連載と同じように、できるだけ数式を使わずに説明したいと思います。連載の中盤までは解説を中心に進めていきます。そして後半は誰でもダウンロードして使える解析ソフトウェアを使って実習を交えて有限要素法の使い方を学んでいきたいと思います。
それでは連載のスタートです!
1.まずは、少しだけ有限要素法の歴史
有限要素法とは解析のコアとなる計算技法のことです。英語では「Finite Element Method」で、各単語の頭文字を取って「FEM」といったりします。この方法を使った技術計算を有限要素解析といい、「Finite Element Analysis」、略して「FEA」といいます。
ここで突然なんですけど、去年の年末に終わってしまった大河ドラマの「篤姫」って、ご覧になっていました?
僕は、いわゆる「歴史」というものが大嫌いでした。「昔のことを知って何の役に立つのか? 未来のことを考えるべきだ!」とずぅ〜と思っていたんですよ。
日曜日の夜8時といえば、ウチでは夕飯も終わって一段落といったところです。そんな中、僕はリビングにパソコンを持ち込んで、メールのチェックや月曜の予定を確認しているわけです。そして家族は「篤姫」を見ています。僕は最初のうちは全く興味がなかったのですが、イヤでも篤姫が視聴覚に飛び込んでくるわけですから、なんとなく見るようになってしまいました。すると、すぅ〜っと、歴史のほんの一部分ですが、分かるようになるんですね。
これは新鮮な驚きでした。恥ずかしい話ですが、これまで織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の関係はボンヤリとしか分かっていなかったのですが、ずいぶんハッキリと分かるようになりました。
と、いうわけで! まずは有限要素法の歴史について、カンタンにご説明しておきましょう。
有限要素法は、1950年代に基本的な理論がまとめ上げられ、航空機の設計に使われ始めました。航空機の翼を小さな要素に分割して、それぞれの要素の特性を数式で表し、それをつなぎ合わせて翼全体の特性として表現する連立方程式を組み立て、その方程式を解くという方法です。
ときを同じくして、「Zienkiewicz」(読み方がムズかしいのですが……「ツィエンキーヴィッツ」と発音します)という学者が、有限要素法を本にまとめました(『マトリックス有限要素法』)。もう25年以上前、この本を購入して読んでみようと思ったのですが、数式ばかりで挫折しました(笑)。この本は、有限要素法に関して名著中の名著といわれており、久しぶりに調べてみたら、いまだに売ってました。3万円以上するんですねっ! ちょっとビックリでした。
編集部注:キャドテックスが発行する翻訳本(販売は科学技術出版社)は3万7800円、古書だと1万5千円程度の取引です。
まあつまり、有限要素法という基礎理論はもう60年も前に出来上がっていたワケです。そしてそれが急速に発展したのはコンピュータのおかげでした。有限要素法の進歩はコンピュータの歴史そのものなのです。コンピュータが複雑な計算を高速にこなすことができるようになったおかげで、有限要素法が実用レベルになったのですよ。
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