「ファン」を用いた製品設計にCFDを役立てるには:初心者のための流体解析入門(12)(1/3 ページ)
流体解析をテーマに、入門者や初学者でも分かりやすくをモットーに、その基礎を詳しく解説する連載。今回は、実際のコンポーネントの設計にCFD(流体解析)を活用することを主眼に置き、「ファン」を用いた製品設計について考える。
これまでは、どちらかというと実際の製品設計に関わる部分というよりも、その基礎となる内容の解説とそれに関わるシミュレーションに主眼を置き、CFD(流体解析)ソフトを活用しながら説明を進めてきました。
今回からはできる限り、“実際に機械などで使用するコンポーネントの設計にCFDを活用する”という実践的な視点で解説していきたいと思います。ということで、今回は「ファン」について取り上げます。なお、今回も前回に引き続き、特にファンの設計に関わる領域の研究をされている、法政大学 理工学部 教授の御法川学先生にご協力いただきました。
そもそも「ファン」とは?
ファンの役割は何か? というと、ずばり“空気を送ること”です。つまり「送風機」なわけですね。送風機にもいくつかの種類がありますが、次のように定義されています。
外部から動力を供給され、それにより気体にエネルギーを与えて、比較的低圧で気体を送り出す機械のこと
“比較的低圧で”というのは、具体的には、圧力上昇が100kPa以下の機械のことで、その中でも圧力上昇が10kPa以上〜100kPa以下のものが「ブロワー」として類別されますが、本稿では、空気を扱い、圧力上昇が10kPa未満の「ファン」を対象として話を進めていきます。
ファンの出力とその効率
まず、ファンのエネルギーとその効率について考えてみましょう。
ファンを駆動するためには、通常「モーター」が用いられます。モーターは外部から与えられた電力を回転するエネルギーに変換できます。このときのモーターの効率が「モーター効率」となるわけです。まず、この段階で与えられた電力の“ある割合”が失われます。そして、モーターで生成された軸動力がファンを回すことになります。したがって、ファンの役割は、
モーターから提供された軸動力を空気の流れ、あるいは流体のエネルギーに変換すること
になります。このときの効率が、「ブレード効率」になるので、ファンというシステム全体の効率は、モーター効率とブレード効率の積で表すことができます。
ちなみに「効率」とは何かといえば、単純に“入力されたエネルギーに対する出力されるエネルギーの割合”といえます。ファンでいえば、入力が軸動力(回転エネルギー)で、出力が流体エネルギーということです。流体エネルギーは、単位時間当たりに流体が外部に対して行った仕事量です。これは「動力」であり、作用した力と距離の積を時間で割ったものになります。これを圧力と流量で表すと、以下のような式で表現できます(式1)。
そして、以下の図1はファンの圧力と流量の関係を示したもので、灰色の部分がファンの出力です。
ところで、ファンの特性はどのようにして測定するのでしょうか。ファンは「ダブルチャンバー」と呼ばれる性能測定装置に接続され、流量はチャンバー中間の「オリフィス」で測定されます。圧力は、チャンバー内部の静圧を測定します。そして、チャンバーの出口に設けられたダンパーと補助ファンを操作することによって、任意の流量での圧力計測を繰り返すことによって、ファンの特性を得ることができます。
なお、圧力の測定に当たっては、流れの影響を受けないようにファンから十分に離れた位置で計測を行う必要がありますが、それは同時に、ファンの実質的な圧力ではないという可能性もあるということです。
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