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米国トップ投資家が語る「モノづくりベンチャーが日本で育ちにくい理由」モノづくり×ベンチャー インタビュー(2/2 ページ)

ハードウェアスタートアップの成長力や、彼らを取り巻く環境は国内外でどのように違うのか。米国の著名ベンチャーキャピタリスト、アニスウッザマン氏に話を聞いた。

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大企業による「投資の文化」が未成熟な日本

MONOist 海外と比較して日本のハードウェアスタートアップは目立つ企業がまだまだ少ないと感じます。その理由は何でしょうか。

ウッザマン氏 スタートアップの市場に存在する資金の規模が日本と海外で全く異なり、成長力に差が生まれているからだ。

 日本でもVC(ベンチャーキャピタル)をはじめ数多くの投資家がハードウェアスタートアップに投資を行っているが、金額でいえば1回の投資で1億円から数億円程度にしかならない。だがハードウェアスタートアップが製品を量産化して、本格的に事業をスケールするためには何百億円という資金が必要だ。つまり、スタートアップの求める額に投資金額が全く見合っていない。

会社のロゴ前で撮影[クリックして拡大]出典:ペガサス・テック・ベンチャーズ
会社のロゴ前で撮影[クリックして拡大]出典:ペガサス・テック・ベンチャーズ

 また、日本では大企業がスタートアップに積極的な投資を行うという文化が薄い。一方で、米国をはじめ海外ではGoogleやAmazon、Facebook、Appleなど大企業による投資やM&Aは盛んに行われている。1度の投資で50億円、100億円といった単位の資金を投じることも珍しくなく、スタートアップへの投資文化は極めて一般化している。

 ただ日本においても大企業の間で「投資の文化」が成熟し、定着するまで大きく時間はかからないだろう。そもそも、どの国でも最初はスタートアップへの投資には慎重で、リスク回避のため小規模な金額での投資から始めるものだ。小規模な成功を重ねることで、次第に大きなリスクにも寛容になる。こうした経験を繰り返していけば、日本でも大規模な投資を行う企業が増えていくだろう。

MONOist 既に日本においても、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)などの取り組みを通じてスタートアップに投資する大企業が増えています。

ウッザマン氏 以前からの予想通り、研究開発型のスタートアップに積極的に投資する大企業は増加している。CVCの投資対象になりやすいのは「動きの見えるベンチャー」だ。研究開発型のスタートアップは事業内容がはっきりしており、明確なガイドラインを持ってプロジェクトを走らせているスタートアップが多く、こうした企業には安心して投資を行いやすいようだ。

MONOist ハードウェアスタートアップは今後どのように展開していくと考えていますか。

ウッザマン氏 AIなど注目度の高い先端情報技術も、結局はハードウェアに依存している。このためソフトウェアスタートアップと肩を並べながら大企業へと成長を遂げるハードウェアスタートアップが、米国や中国を中心に今後増えていくだろうと予想している。



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